清春 「エレジー」

エレジー

エレジー

過去の全キャリアから選ばれた楽曲のリズムレス・アレンジ盤。


自分は一昨年の VISUAL JAPAN SUMMIT で初めてアコースティック編成での清春を見たのですが、最小限のギター演奏と静まり返った客席、その中で彼のカリスマ性は特別に際立っていました。トレードマークの妖艶かつ伸びやかなハイトーンヴォイス、そこに紆余曲折を経てきたが故のハスキーな渋味も入り混じり、歌いながら静かに煙草を燻らせるその佇まいは、確かに他には無い存在感を放っていました。この作品は彼が近年継続しているライブシリーズ「エレジー」の世界観を再現するというコンセプトで、いずれの楽曲もアコギやチェロなどを主体とした簡素なアレンジ。フォーキー、ブルージーでありつつ厳かなゴシック感も漂う雰囲気を纏い、彼の歌声はもしかするとこれまでのキャリアの中でも最良の形で、その魅力を存分に発揮しています。特に「LAW'S」の真に迫った絶唱や、「この孤独な景色を与えたまえ」の暖かさと冷たさが密接に溶け合った感覚などは、今回の作風ならではのディープな味。そして2枚目に収録された同曲のポエトリーリーディングでは、その濃密な空気感がさらに陶酔度の高いものに。ソロシンガーならではのひとつの境地。

Rating: 7.8/10



清春 / LAW'S【Music Video】