Plastic Tree 「doorAdore」

2年3ヶ月ぶりとなる14作目。


メロウなミドル曲があり、ライブ映えしそうな疾走曲があり、本流から脇に外れた変わり種の曲があり、といったいつものプラの定型に沿ったアルバム構成なのですが、いずれの曲にしても拭い取れない染みのように寂寥感が纏わりつき、バンドの演奏がどれだけラウドに鳴らされていても、歌っているその眼は心ここに在らずといったような、虚ろで不安定な印象を受けます。もちろんそれは彼らがデビュー以来ずっと一貫して保ち続けている味であり、今作においてもそれが取り立てて着飾るわけでもなく、良くも悪くも大きな変化のないままで打ち出されているわけですが、「遠国」で幻想的なアルペジオゆらりと立ち昇り、「静かの海」で最後の音が完結しないまま消えていくという、その一連の流れはちょうどアルバムジャケットにある砂漠の上の蜃気楼のような、決して掴み取ることのできない物悲しさを綺麗にパッケージングしていると思います。前作と同様に全メンバーが作詞作曲に関わりながら、モノクロの色調は統一され、プラはこう在るべきだろうという姿が自然に打ち出されたアルバム。ただ新鮮味に欠けるという弱点もそのままですけども。

Rating: 6.3/10



Plastic Tree/「遠国」MUSIC VIDEO (from Album「doorAdore」)