国府達矢 「ロックブッダ」

ロックブッダ

ロックブッダ

京都出身のシンガーソングライターによる、14年3ヶ月ぶり3作目。


正しく青天の霹靂というべき作品です。ひどく長期に渡ったレコーディング作業を経て構築されたサウンドは、全方位から音が飛び交ってくると言っても過言ではないくらい、様々なパートの音が様々な定位で鳴らされて絡み合う、その空間デザインの緻密さにまずは慄く。しかしながら実験的だったり小難しい印象はまるでありません。楽曲自体はむしろ旧来的なロックバンド編成が土台にあるもので、ブルース/ハードロックのダイナミズム、skillkills のリズム隊を迎えて強調されたファンク/ヒップホップのふくよかな躍動感、そして国府達矢の浪曲ばりにこぶしを利かせたソウルフルな歌唱、そういった様々な音楽要素がひとつの曲の中でグルグルと渦を巻き、そこから生まれる陽性のエナジーは極めてストレートなインパクトを持ったもの。ヴォーカルに限らず全てのプレイが歌心を感じさせるような有機的なうねりを見せ、それらが徹底的な調整を受けたプロダクションによって繊細かつビビッドな色調となり、大仰なアルバム表題に恥じないスピリチュアルで圧倒的な世界観を形成しています。ラストの余韻の深さに至るまでどっぷり濃厚な異形作。

Rating: 8.6/10



国府達矢 "薔薇" (Official Audio)