FUJI ROCK FESTIVAL '18 2日目

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2日目です。当初は台風12号の直撃が危ぶまれたのですが、蓋を開けてみればギリギリ逸れてくれて一安心…かと思ってたらそれでも夜になると普通に雨が凄くて、ゴアテックスの装備でも防ぎきれないレベルの大雨に体力気力をゴリゴリ削がれました。


eastern youth @ GREEN STAGE

フジロックは7年ぶりのイースタン。自分的には前任ベースの二宮友和が脱退する前の最後のツアー以来。果たして天気は「青すぎる空」が広がるのか、「雨曝しなら濡れるがいいさ」となるのかなどと考えてたらどっちも演ってくれました。現ベースの村岡ゆかは初めて見ましたがすでに二人の呼吸を十分に把握しているようで、すっかり盤石のアンサンブル。「矯正視力〇.六」での柔らかな女性コーラスもバッチリ再現し、結成30周年を迎えても正しく現在進行形のイースタンといったところ。冒頭を飾った「ソンゲントジユウ」「街の底」といった近年の曲ももちろん素晴らしいですが、自分が一番熱くなってしまうのはやはり「旅路ニ季節ガ燃エ落チル」の楽曲なのですね。これはもう思い入れ込みなので仕方がない。ラスト「夏の日の午後」に至るまで、吉野寿の全身から迸る男泣きのエモーションを存分に浴びた60分でした。フジのイースタンが悪くなるわけがないんだよな。


小袋成彬 @ RED MARQUEE

デビューアルバム「分離派の夏」を引っ提げての夏フェス巡業です。前半は本人ひとりがブラリと登場し、オケを流しての独唱。Tシャツにジャージという完全に部屋着のスタイルで、ポケットに手を突っ込んだまま客を見てるような見てないような素っ気ない素振り。そして後半はギターとシンセのサポートを呼び込み、James Blake よろしくトリオ編成で打ち込みと生演奏の中間を行く演奏。そのライブの構成からは正直目新しさは全く感じなかったし、客を盛り上げるショウマンシップという意識は彼の中にはおそらく無いのだろうなと思いました。ただ純粋に、彼の歌が凄かった。音源と同レベルかあるいはそれ以上の精緻さと情感を見せており、生で聴くとその気迫にすっかり魅了されてしまいました。現行のオルタナティブ R&B に沿いながら、実験性や演出などよりも歌の力のみで真っ向勝負を仕掛ける姿は、聴衆に背を向けているようでその実聴衆の意識を完全に飲み込んでいました。そして「夏の夢」に続けて披露されたフジファブリック若者のすべて」カヴァー。完全に予想外で驚かされましたが、それでも違和感は無かった。やはり彼の中には J-POP の血が色濃く流れているのだということを裏付ける、とても意義のあるカヴァーだったと思います。最後に軽く手を振ったのみで MC は無し。彼は最後まで粗削りで気難しいままでした。


マキシマム ザ ホルモン @ GREEN STAGE

もう何年ぶりだか分からない、少なくともマキシマムザ亮君が痩せてからは初のホルモン。溜まりに溜まった鬱憤をここぞとばかりに晴らしに行こうと勇んで最前ブロックに突っ込み、ヘドバンのしすぎで首と背中の痛みが数日取れなくなった34歳が俺です。相変わらずメロディ、リフ、グルーヴ、展開の切り替えなど全てがフィジカルに作用するキラー曲のオンパレードで、最初は大人しくしとこうと思っても即座にギアをハイに入れられてしまうんですよね。あとスクリーンには歌詞と一緒に涼宮ハルヒサマーウォーズのシーンまで突っ込んでおり、やはり彼らが「DQN気質のオタク」という一番面倒な人種であることを再認識したのでリアルでは絶対関わりたくないですね。鉄板曲もレア曲も織り交ぜた満足の内容で鬱憤は無事成仏しました。


SKRILLEX @ GREEN STAGE

米国きってのバカ DJ ことスクリレックス。初お目見えでしたが完全に予想通りで笑ってしまった。徹頭徹尾 EDM /ブロステップの嵐。小難しいことは一切考えない、持ち時間ほぼ全てを縦ノリの熱狂に費やす巨大レイブパーティーが開催されていました。途中で Migos「Bad and Boujee」を挟んで流行に対応しつつ、System of a Down「Chop Suey!」を突っ込んでメタルの出自もアピールという抜け目のなさ。ブロステップはもう下火かと思っていたらそこはやはり本家本元という感じで、パワフルな重低音や即効性にステータス全振りしたシンプルさ故の強さで、一切の留保なく踊れる流石の手腕を発揮していました。

そしてその強さは最後の10分で別の強さに駆逐されてしまいました。事前に告知されていた通りスペシャルゲストに我らが YOSHIKI 降臨。もはや本当に登場したというだけで笑ってしまったのですが、手始めにクリスタルピアノを持ち込んで「Endless Rain」を奏で、客に合唱を求めるという普通に X JAPAN のライブを展開。豪雨の中で聴くフジロックの「Endless Rain」は何だか壮大な冗談のように思えて、完全に笑いしか生まれなかった。Skrillex も一応ギターでメロディをなぞってはいるものの急に存在感が希薄に。他人のライブだろうが構わず我が道を行く、さすが俺たちの林だ。そしてラストはやはりドラムに切り替わり、代表曲「Scary Monsters & Nice Sprites」でコラボ。ドラムンベース状態となった楽曲の荒々しさで無敵のカリスマ性を見せつけ、ひとしきり「フジロック!!」と叫んだ後に去って行った。あまりのスタンスのブレなさに改めて感動しました。俺たちは運命共同体だ。


KENDRICK LAMAR @ GREEN STAGE

事前には本当に客が入るのかなどと不安視されていた今回の Kendrick 。前回出演の2013年のフジには自分は行けなかったのですが、ホワイトステージはやや寂しい客入りだったと聞きます。しかしそれから瞬く間に全世界をノックアウトしヒップホップゲームの頂点に君臨した彼を絶好のタイミングで見ることができる、ということでグリーンステージはほぼ満杯となっていました。

内容は昨年から続いている「THE DAMN. TOUR」の一環、終盤戦ということですでに出来上がった完成品を披露する形だったかと思います。Kendrick 扮する格闘家 Kung-Fu Kenny が修行のために世界中を旅しながら様々なハプニングに襲われるというアクション映画仕立ての映像が挟まれるコンセプチュアルな流れ。惜しみない特効やダンサー、ステージ両脇に配置したバックバンドによる重低音、そういった助力がありながらも、やはり第一にケンドリックの存在感が圧倒的でした。広いステージの中央に MC がたった一人。その堂々たる佇まい、一挙手一投足の洗練されたパフォーマンス、数万のオーディエンスを余裕綽々でアジテートするカリスマ性は、もはや同じ人間とは思えない規格外のオーラを発していました。オープナー「DNA.」で即座にこめかみに重い一発を食らった心地になり、「Backseat Freestyle」のダークな殺気に背中から痺れさせられ、「LOYALTY.」の甘美なムードで酔いが回り、終盤「Bitch, Don't Kill My Vibe」「Alright」「HUMBLE.」の代表曲畳み掛けに至っては何をかいわんや。

もうこの本編の時点で十二分に満足していたのですが、アンコールで披露された「All the Stars」では観客に携帯などのライトを掲げさせ、グリーンステージ一面に星の海のような光景が広がり、ちょうど楽曲の世界観を綺麗に再現していたのには感動以外の言葉が無かった。この瞬間に立ち会えただけでも嵐の中で耐えた甲斐があったというもの。こんなビッグスターがアタマ張ってるんだからそりゃヒップホップが天下取るわという感じで、彼の魅力を直に感じ取れた貴重な一時でした。


ということで2日目のベストアクトは X JAPAN です。