羊文学 「若者たちへ」

若者たちへ

若者たちへ

2012年結成の3人組による初フルレンス。


例えば今作のリードトラック「ドラマ」、その冒頭にある「青春時代が終われば/私たち、生きてる意味がないわ」という一節。この切迫感の塊のような歌詞を不意に投げかけられて、まるで背中からサクリとナイフを突き刺されたような冷たい心地になる。サウンド的にはほとんど飾りつけのない真っ当なオルタナティブロック。おそらく ART-SCHOOLLOSTAGE 、あるいはきのこ帝国などの影響下にあるのか、しかしそれらよりもさらにシンプルで風通しの良い、スリーピース各々のニュアンスがダイレクトに伝わる演奏。そのシンプルさ故にメインコンポーザー塩塚モエカの表現は、触れると傷つきそうな繊細さと生々しさが一層際立っています。「エンディング」や「絵日記」では取り返しのつかない過去に思いを馳せ、「Step」や「コーリング」では痛みを受け入れながら自らに言い聞かせるように前を向く。そのナイーブな心情は余白の多い歌詞と余白の多い音、そして心が張り裂ける寸前で踏み止まっているような歌声の伸びやかさにより、痛々しいほどのリアルさを持って迫ってきます。夏の季語が多いのも儚さに拍車を掛けている要因かも。

Rating: 8.3/10



羊文学 "ドラマ"(Official Music Video)