SUMMER SONIC 2018 OSAKA 2日目

f:id:sikeimusic:20180816221856j:plain

2日目も行ってきた。だから書く。感想を。




DREAM WIFE @ MOUNTAIN STAGE

UK はブライトン出身の女性3人組。もうはちゃめちゃに若さが溢れているのである。満面の笑顔で元気いっぱいに飛び出し、飾り気のない至ってシンプルなパンク寄りのロックンロールを次々に繰り出す。3人が3人ともキュートで溌剌としていて、途中では「性別に囚われず自分だけのルールを作ろう」という昨今の時流を受けたメッセージもあったり、まあ何とも怖いものなど何一つなさそうな真っ直ぐさ。30過ぎのオッサンは何も言わず、拝むような気持ちで彼女らの演奏を見届けました。


PALE WAVES @ MOUNTAIN STAGE

こちらはマンチェスター出身の4人組。ヴォーカル Heather Baron-Gracie の眼と唇を黒く染めたゴスメイク、溶けるようなリバーブと透明感に満ちたクリーンギター、そして曲によっては正しく90年代マンチェスターというようなダンスビート等々、もう何処を切っても UK の申し子としか思えない突き抜けっぷりが清々しい。聴いているうちに過去のビッグネームの数々が脳裏を過ぎりますが、単なるリバイバルには終わらない新人ならではのフレッシュさが活かされた、大器を感じさせる魅力を持っていると思います。何よりダークな外見とは裏腹のポップなメロディ、その良質さが第一にスッと耳に馴染む。どの楽曲も綺麗にツボを押さえてくれている感じで、ちょっと抗えないものがありましたね。


MARMOZETS @ MOUNTAIN STAGE

またも UK の5人組。事前の情報では The Dillinger Escape Plan や Mars Volta に影響を受けていると聞いていたのですが、実際の楽曲は確かにヘヴィではあるものの、さほどプログレッシブだったり衝撃的な激しさというものは感じず、むしろポップパンク勢に通じるような単純明快さ、健康的とも言えるパワフルさが印象的でした。個人的には正直残るものは少なかったですが、ドラマーが何かとあれば椅子に立って観客を煽ったり、投げキスを繰り返してはステージを跳び降りてクラウドに向かったりでメンバーの中で一番サービス精神旺盛で無闇に目立っていた。多分良い人なんだろうな。


THE BLOODY BEETROOTS @ MOUNTAIN STAGE

イタリア出身のダンスユニット、この日はライブセットということで生ドラムにメタルギターを噛ませたガッツリとロックな内容。ゼロ年代ダンスパンクの荒波からダブステップ/ EDM へと抜け、ますます音圧の厳つさに磨きをかけた縦ノリ一直線のダンスナンバー乱れ打ち。曲間はほとんど置かず常にアッパーな勢いが持続し、とにかく無理矢理にでも聴衆をアゲにアゲる、ある種の潔さが光っていました。中心人物 Sir Bob Cornelius Rifo はギターやピアノなど達者なマルチプレイヤーで確かな技量や理論を持っているのだけど、それを完全にバカ方面へのアウトプットに回している、というところで彼には Andrew W.K. に近い魅力を感じました。こないだのフジでの Skrillex でも痛感したけど、なんやかんやで結局こういう分かりやすいのが好きなんや自分は。ただただ楽しかっただけ。


MASTODON @ MOUNTAIN STAGE

2009年のサマソニで見て以来のマストドン。確かその時にも思ったけどやはり渋い。非常に味わいが深い。6/8拍子を多用した重量級のヘヴィグルーヴに、メンバー全員が代わる代わるでヴォーカルを取りながら壮大なメロディを歌い上げる。バックのスクリーンには古代の戦争の風景、微生物が蠢く小宇宙、そして砂漠の荒野に立つ骸骨の王女。この一大叙事詩的な重厚さこそマストドンという感じで、自分はウンウンと深く頷きながら静かに力を込めてメロイックサインを捧げました。ラスト「Blood and Thunder」では我慢できずに前方に突っ込んだけど。髭モジャのオッサンばかりがテクニックを駆使して泥臭く荒々しいヘヴィメタルを演奏する。それで万事は OK だ。


BULLET FOR MY VALENTINE @ MOUNTAIN STAGE

あまりにも懐かしい。遡ること13年前、自分が生まれて初めて行った夏フェスが2005年のサマソニだったのですが、その時に出演していたのがデビューしたての BFMV 。当時はヘヴィメタルバンドのライブを見ること自体も初めてだったので、その突き刺さるようなヘヴィネス、剛直さに強いインパクトを受けたものでした。その時以来になる今回の彼ら。明快なメロディを取り入れてよりスケール感を増した部分もありますが、多くは当時感じた時のままでした。先のマストドンとは違い、直線的なスピード感で洗練されたメタルコアサウンド。今の自分にとってはマストドンの方がずっと好みなのと、さすがに疲労が重なったので後ろでへたりこんで見てましたが、長い時間の経過に思いを馳せながら静かにメロイックサインを捧げました。


NINE INCH NAILS @ MOUNTAIN STAGE

上にも書きましたが人生初の夏フェスが2005年のサマソニ。その時のオーシャンステージのヘッドライナーとして出演していた NIN 。彼らのライブもまたその時以来となるので、もう感慨深いというか何と言うか、自分の心の片隅に積み重なった鬱屈を成仏させるような気持ちで最前列に挑みました。

開演時刻になるとステージを覆い尽くす勢いでスモークが焚かれ、その中から SE も無く突如姿を現した Trent Reznor 一行。完全に魔物の出現である。最近の新曲から始めるのかと思いきやいきなりの「Somewhat Damaged」で即座にフロアの熱狂が沸点にまで達し、鉄槌のようなインダストリアルビートに乗せて「Too fucked up to care anymore」と合掌するオーディエンス。ロクでもないフレーズにも拘らず、自分はこれを待ち望んでいたのだと何だか目頭が熱くなる。その後も「Wish」「March of the Pigs」と往年のキラーチューンの応酬で戦場のようなモッシュピットが生まれていましたが、もちろん思い出迷子族だけに向けたセットリストではなく、中盤では近年の EP 作からも立て続けに披露。特に「Bad Witch」の楽曲は比較的オーセンティックなロックンロール感がありつつ、少しずつ毒気が浸食していくような恍惚感も膨れ上がり、彼らが持つダークな緊張感、中毒性をまた新たな形で提示していました。ストロボやスモークを多用した演出効果も相まって、まるで彼らの演奏が大きな口を開けて会場をまるごと飲み込む怪物のように錯覚した。

そして中盤ではトランプ大統領に悪態をつきながら David Bowie「I'm Afraid of Americans」のカヴァーも披露し、ラストは「Head Like a Hole」の大合唱、そしてお馴染み「Hurt」の荒涼としたムードで締め。最後に Trent はギターを豪快に宙に投げ、激しい気を発すると同時にオーディエンスの熱狂を全身で受け止めていた。NIN が NIN として完璧に我流を貫いたステージ。積年の鬱憤は無事に浮かばれました。


ということでベストアクトは当然のように NIN でした。PALE WAVES もめっけもんでしたね。