鎌野愛 「muonk」

muonk [ANRF-0001]

muonk [ANRF-0001]

香川出身のシンガーソングライターによるデビュー作。


彼女がかつて所属していたハイスイノナサの中においても、彼女は喜怒哀楽の表情をほとんど抑制し、あくまでも自身の声を他の楽器と同じ「音色」のひとつとして取り扱っており、何処か浮世離れした冷たいイメージを見せていました。その趣向はこの初ソロ作にそのまま引き継がれています。シャープに研ぎ澄まされたエレクトロニクスと、透き通ったピアノの音色が交錯するポストクラシカルな楽曲群。その上でヴォーカル面では聴き手にイメージを喚起させる断片的な言葉を並べたり、または奇矯な響きのオノマトペで意表を突いてきたり。歌唱法もおどけない可愛らしさから聖性に満ちたオペラチックなクワイアまでと多彩な手法を駆使し、様々な切り口でヴォーカルという楽器の可能性を押し拡げる試みがなされています。そこにはハイスイノナサが表現していた世界観と通じる部分がありながら、バンドという肉体性から解き放たれてアブストラクトな浮遊感が増し、より一層焦点が定まったような印象もある。中でもわずか3分弱の間に Steve Reich の幻惑と恍惚を集約した「祈りの果て」、表題通り宗教的な物々しさすら感じる「祭壇」などはハイライトかと。

Rating: 7.7/10



鎌野愛 solo 1st full album「muonk」Trailer