細野晴臣 「HOCHONO HOUSE」

HOCHONO HOUSE<CD>

HOCHONO HOUSE<CD>

1973年発表のソロデビュー作「HOSONO HOUSE」のリメイク盤。


今作を聴くに当たってオリジナルの「HOSONO HOUSE」の方も合わせて拝聴しましたが、もちろん変化がないとリメイクする意味はないのですけども、まさかのそういう方向で来ましたかという驚き。オリジナル盤では牧歌的で慎ましやかなフォークソングの裏で、意外に骨格の強めなドラムが存在感を放っている場面も多々ありました。今作ではそういったロック的要素が大幅にカットされ、代わりに極めてエレクトロニックな質感のビートを挿入。キーボードやギターの演奏も立体的な音響空間の中におけるテクスチャーのひとつという扱いで、特に前半部は Frank Ocean や James Blake 、何なら Ariana Grande の新作とも繋がりそうな、ダブステップ以降の静謐と浮遊感が活かされたクールな音像。ただそれらのアクトほど低音を利かせたりメロウな情感を滲ませたりという所までは行かず、あくまで原曲が持っていた素朴かつ洒脱な味わいも残され、その結果オルタナティブ R&B の先鋭性とフォーク/ブルースの芳醇さが混在した、おそらく世界的に見ても稀なパターンではないかという調合実験に成功しています。御年70過ぎにしてこのセンスの鋭さは一体何なんだ。

Rating: 8.5/10