パスピエ 「more humor」

2年4ヶ月ぶりとなるフルレンス5作目。


モアユーモアとは言いつつも、アレンジをこれまで以上にゴージャスに盛っていくことはしていません。派手な作風は「幕の内ISM」や「娑婆ラバ」の頃に十分やったからか、今作はむしろ音数を絞り込みながら、これまでとは違う形でのユーモアを模索しているように見えます。オープナー「グラフィティー」こそアグレッシブなシンセリフが押し寄せるパンチの効いた楽曲ですが、それ以降はミドルテンポが主体となり、その中でバンド演奏を空間的なサウンドデザインとしてどう落とし込むか、という所に注力している節がある。シンセ、ギター、コーラスの重層が不思議な浮遊感を見せる「煙」、スクエアなファンクグルーヴの上で自由気ままなフレーズを散りばめる「だ」、表題通りの3拍子でアンビエント風のミステリアスな奥行きも見せる「waltz」といったあたりは特に。ドラマーが脱退してからアンサンブルがさらにシンセ/エレクトロニクス主体になっている風にも聴こえるし、実験を重ねていく一方で従来の溌剌としたポップなパスピエ節もなるべく活かしたい、というバランス感を目指す過渡期ゆえの苦心の跡が、聴けば聴くほどに感じられる。

Rating: 7.1/10



パスピエ – グラフィティー , PASSEPIED – Graffiti