THA BLUE HERB 「THA BLUE HERB」

THA BLUE HERB

THA BLUE HERB

札幌出身の3人組による、約7年ぶり5作目。


これまでに比べて、ビートは抑制されたテンションでシンプル。ラップは決して語気の強いものではなく、着実に韻を踏みながらも、まるで独白のような静けさを一貫して湛えており、むしろ優しさすら感じられる。にも拘らず、今作は THA BLUE HERB のカタログ中最もヘヴィなアルバムと言えるかもしれません。全30曲の大ボリュームなだけに歌詞の題材は多岐に渡っており、現代の日本の情勢、MC バトルに対する違和感、仲間の死、男女の擦れ違い、追想、そしてラッパーとしての矜持など。途中「令和」という単語も含んでいることからかなり直近まで歌詞を書いていたことが伺えますが、それは結成20周年を超えたグループの総括と言うよりも、ILL-BOSSTINO のこれまでの人生を丸ごと総括したような、過去から現在、そして未来へと向かう長く太い時間の流れがそのまま言葉として刻まれています。膨大な情報量でありながら無駄なラインはまるで見当たらず、先述のテーマ群は喜怒哀楽の感情の移り変わりと同じようにシームレスに繋がれ、セルフタイトルの名に相応しく TBH の生き写しと言えるような内容。これがエモーショナルでなくて一体何なのか。

Rating: 8.8/10


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