FUJI ROCK FESTIVAL '19 2日目

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昨日に続いてフジロック2日目です。この日、マジで辛かった。




GEZAN @ WHITE STAGE

ようやく見ることが出来た下山。ガッチリ引き締まったディストーションサウンドを筆頭に、アンサンブルは十分に鍛え上がっていました。マヒトゥ・ザ・ピーポーの身体を仰け反らせての絶叫に始まり、時には高速で疾走、時にはバウンシーなグルーヴでヘッドバンギングを促す。パンクとメタルの境目を自由に行き来し、最近の曲ではそこにヒップホップのテイストも入るという、ストレートな即効性がガツンと来る演奏。ただそこに全身真っ赤な衣装で固めたマヒトゥの特徴的なハイトーンヴォイス、独特の言語感覚によるアジテーションが乗っかると、やたらとクセが強く、異様に生々しくて切迫した、GEZAN ならではの奇妙な味に変わる。ドラムの石原ロスカルが Slipknot のTシャツを着ていたのが妙に印象に残っているのですが、アンダーグラウンドの精神を保ちながら広い視野で世界を見つめる、という姿勢には通じるところがあるかもしれません。

どの曲もライブで体感するとフィジカルに訴えかける攻撃性が数段増しで響いてきて痛快この上ないものでしたが、何より衝撃的だったのが終盤に演奏された「BODY ODD」でした。原曲でも多数のゲストが参加していましたが、この日は Campanella 、那倉太一 (ENDON) 、小林祐介 (THE NOVEMBERS) 、山田碧 (the hatch) 、蝦名啓太 (Discharming man) 、そして鎮座DOPENESS へと繋げる怒涛のマイクリレー。これは単なる寄せ集めではない、各々が各々の音楽を信じ、それを自分が納得できる手法で世に出す、インディペンデントであることに拘った人間ばかりの、言わばスタンドアローンコンプレックス。その強い意志を持ったが故に共鳴した者ばかりを連ねたこの演奏は、GEZAN 並びに主催レーベル十三月周辺の仲間をひっくるめたインディ決起集会。完全にカチコミです。自分達が少しずつ作り上げてきた絆を堂々とフジロックの場に誇示するという、あまりにもドラマチックな演出で体中に電流が走ったような心地になった。生粋の叩き上げである彼らの底力を思い知らされました。




銀杏BOYZ @ GREEN STAGE

銀杏のライブを見るのは今回のフジが3回目です。1回目は2005年のアルバムレコ発ツアー。峯田和伸は喉がガラガラで満身創痍でした。2回目は大きく飛んで2016年の KING BROTHERS との対バン。すでにバンドは半壊して峯田のソロユニットと化していました。それでも歌うことを諦めず、と言うか峯田の場合は歌うこと以外に生きる道がないのではないか(俳優業はやってるけど)と思いますが、とにかく銀杏は続いた。どちらの時も痛々しい程に傷だらけで、それでも力強く目を見開いて叫び続ける峯田の姿に涙が止まらなかったのをよく覚えています。今回は多少は慣れたのか比較的冷静に見れました。

ただやっぱり常軌を逸してる。唾を撒き散らしてマイクをベタベタにしたり、クラウドに突っ込んだ挙句パンツをずらされてまた書類送検されそうになったり、見ている側に嫌悪感すら抱かせる過剰なパフォーマンス。それは「ロックは型破りでなければならない」というマナーに則ってるのではなく、内なるエナジーを全て放出し切るにはこれくらいやらないと無理だ、という本能のみに忠実に従っているように見えます。それが逆にクレバーな風にも見えたり、何処までが計算で何処までが狂気か分からない、この危うさにこそ自分は惹かれてるんだなと。

「生きたい」に始まり「BABY BABY」「ぽあだむ」に終わるという構成は割と定型化してきたのかなと思いますが、途中では GOING STEADY 時代の「愛しておくれ」も挟んで意表を突いたり。何と言うか、ライブを見ながら帰るべき場所に帰ってきたという気持ちになりました。きっと銀杏はもう峯田のライフワークになってるはず。お互い生きていたらまた会えるでしょう。




Unknown Mortal Orchestra @ WHITE STAGE

ニュージーランド出身の3人組。この日はメンバーの実の父と兄弟もサポートに加わっての5人編成。一応サイケロックという知識だけ頭に入れて臨んだのですが、昨日の King Gizzard のようにバッサリ裏切られることはなく(笑)、全ての音が丸っこく柔和に馴染む、正しくローファイ・サイケデリア。そこにソウルや R&B のエッセンスも混じっているのか、メロディやギターフレーズのひとつひとつがとにかく甘美。時にはファズを踏んでグシャリと潰れた大胆なサウンドを出すことも多々ありましたが、中心のメロディは何とも芳醇で馴染みやすく、ひたすらに愛らしい。そこに軽快なディスコビートが入りサックスまで乗っかるとなれば、何だかもうアルコール無しで気持ち良い酔いが回ってくる気分。メロディセンスが結構日本人好みな気がしたんですが、ひょっとして最近のシティポップブームも噛んでたりするんだろうか。ともかくここまで人懐っこいバンドだと思わなかったので、良いめっけもんでした。




Alvvays @ RED MARQUEE

こちらはカナダの5人組。未だに世界中で根強い人気を持つシューゲイザー/ドリームポップです。ステージは照明が終始逆光でメンバーを照らし、表情はなかなか伺えない。しかしヴォーカル Molly はキュートなシャウトでテンションの高さをアピールし、空間を優しく包むクリーントーンの重層は何とも清冽な輝きに満ちたもの。目新しさは無いと言えば無い。ただリバイバルという単語が蘇らせるという意味合いを含むだけに、ちゃんと現在進行形たるフレッシュさ、幻想的でありつつ人の血の通った暖かさを感じさせてくれる、ある意味至って正義的なインディロック。良い曲が良い音と良い声で鳴っている、もうそれだけで十分かもしれない。




ここまでは頑張りましたけどもう無理でした。前日3~4時間程度しか眠れてないのに加えて、台風接近による長時間の土砂降り雨で肉体的にも精神的にも限界が来てしまった。ていうか完全に荒天状態だったしリアルに身の危険を感じましたよね。フジロック12回目だけどここまで酷い雨初めてだったよ。本当は American Football も観たかったけど退散。この日のベストアクトは GEZAN 。