泉まくら 「as usual」

as usual

as usual

福岡在住のラッパーによる、約2年半ぶり6作目。


名前だけは前々から知っていたものの、彼女の曲をきちんと聴いたのはオムニバス収録曲「パルコでもロイホでもラブホでもいいよ」が最初で、それを聴いた時は曲名のライトな口調とは裏腹の、背後に見え隠れするストーリーの重さに胃もたれを起こしそうになったのを覚えています。その感覚はこの新作でも健在。ジャケのイラスト画のポップなイメージをバッサリ裏切るような、都会の夜の匂いを漂わせるクールなエレクトロトラック、そこでラップも歌もこなす泉まくらのスキルは何とも流暢なもの。ただ口当たりは軽やかなのに後味がやたらとゴッテリしてるように感じるのは、それもやはり泉まくらの声によるところが大きいと思います。低い声の囁きや、清涼感の中に繊細な揺れを見せる歌声には、実際に歌詞に表している感情や表情だけでは収まらない複雑な心境が反映されているようで、その切実さにはともすれば圧倒されるような心地になる。この複雑さは決して彼女特有の異質なものではなく、あくまでも日常的な「いつも通り」の感情であり、そこに多くの人がシンパシーを覚えているということでしょう。人の心を簡単に知った気になってはいけない。

Rating: 7.5/10



泉まくら 『as usual』 Pro. by maeshima soshi