菅野よう子 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+」 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.2」 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.3」

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+

2002年放送のアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」のサントラ集。


2020年に攻殻機動隊の新作発表が決定し、それを記念して過去シリーズのサントラがサブスク解禁されたということで。個人的にはかなり久しぶりに攻殻の音楽に触れるので所々忘れているところもあったのですが、改めて聴くとやはり曲調の幅広さに唸らされます。オープニングテーマ「inner universe」のインパクトがとても強烈だったし、題材も題材だしでサイバーパンクのイメージに準拠したテクノ/エレクトロニカ曲が中心になるのかと思いきや、もちろんそういう楽曲も多く用意されてはいるのですが、それに匹敵する勢いで横道に逸れたものが多い。血を沸かすミクスチャーファンク「Run Rabbit Junk」、豪快なハードプログレセッションが展開される「ヤキトリ」、苦み走ったブルーズのエンディング曲「Lithium Flower」、大陸的な広がりを見せるオルタナティブロック「Some Other Time」など、人間的な熱量を帯びた楽曲がテクノ曲の冷たさと拮抗するような内容。そもそも S.A.C. シリーズが SF 的な設定に基づきつつもストーリー自体は刑事サスペンス要素の濃いものだし、その世界観を反映したという意味では順当な結果かと思います。

Rating: 8.1/10


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.2

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.2

2004年放送のアニメ「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」のサントラ集。


前作の時点でもサイバーパンクの定義、イメージを拡張するような振り幅の広さが印象的でしたが、ひとつ段階を踏まえての今作では更なるチャレンジが試みられています。最も耳を惹くのは特に前半、キナ臭くスリリングなスピード感の上でサックスが力強く旋回する「ride on technology」「3tops」、冷徹な静けさを湛えた中でトランペットが妖しく響く「アイドリング」といった、アニメのハードボイルドな側面により焦点を合わせたかのようなジャズ要素。それらが S.A.C. の世界観に一層深みを与える一方で、菅野流ゴシックとも言える荘厳な聖性が圧し掛かる「サイバーバード」や「i can't be cool」、また素直に耳に馴染む繊細なフォークポップ「what's it for」、そしてアニメの顔役を務めるアッパーチューン二大巨頭「rise」「Get9」と、ますます賑やかさを増した自由度の高い内容は、ある意味サウンドトラックというフォーマットならではのものではないかと思います。どの楽曲も個性的でありつつ S.A.C. のストーリーや映像を強烈に呼び起こさせるし、数多くある菅野よう子ワークスの中でも代表作のひとつと成り得る一枚でしょう。

Rating: 8.4/10


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.3

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.3

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」のサントラ集第2弾。


O.S.T.2」の反動、と言うよりは最初から「O.S.T.2」とこの作品でセットという風に考えていたのかなと思いますが、これまでに顕著だった曲調の多彩さはグッと引き締められ、サイバーパンクの元来的なイメージに寄り添ったテクノ要素、クラシカル要素の強い楽曲がメインを占めています。浮遊感を帯びたエレクトロビート、そこに加わる荘厳なクワイアがエキゾチックな神秘性も感じさせる「トルキア」はこれぞ攻殻ならではと言える楽曲だし、ブレイクビーツ~生ドラムのリズム隊が激しく荒ぶる「break through」、異様にベースラインが際立ったヘヴィセッション「flying low」、いつにも増して直に Björk 味が表れた「CHRisTmas in the SiLent ForeSt」など、いずれにしても攻殻シリーズの元来的な近未来イメージがかなり真っ当な形で打ち出されています。細かい部分を注意深く聴けばジャズ、ロック、フォークなど様々な趣向を凝らした場面は多数ありますが、それらも雑多さではなく作品全体のクールなトーンに陰影をつけ、統一感を高めるという狙いで使われてる。ここまでの3作の中では最も流れのスムーズな、きっちりアルバム然とした作品だと思います。

Rating: 7.8/10