People In The Box 「Tabula Rasa」

福岡出身の3人組による、約1年半ぶりフルレンス7作目。


前作「Kodomo Rengou」で提示したモードが現在でも継続してる、と言うよりは、「Kodomo Rengou」で見せていた創作意欲の高まりが現在でも収まらないままでいる、と言った方が近いかもしれません。例えばオープナー「装置」を取って見ると、不穏なピアノの音色と軽やかなメロディが混ざらないまま並走し、やがてゆっくりと窓を開けるようになだらかな広がりを見せ、かと思えばその情景を引き裂くようにしてノイズの鉄槌が落ち、完全に宙ぶらりんなままで曲が終わる。またそれ以降でも、美しい音色を丁寧に折り重ね、曲の持つ世界観を極めて慎重に紡いだとしても、明確にひとつのカタルシスを迎えるようなことはなく、やはり徹底的に掴み所がない。ただそれでも右往左往している印象はまるでなく、むしろ最短ルートで目的地へと突っ切っているような潔さすら感じるのですね。彼らの中でこれこそが真っ当なポップ、真っ当なロックだとする基準が、その他大勢とは根本から違っているとしか思えない、きっちりと整理整頓されたヘンテコさ。本来の個性がさらに精度を増してきた、健やかな奇盤とでも言いましょうか。

Rating: 8.2/10