小沢健二 「So kakkoii 宇宙」

So kakkoii 宇宙

So kakkoii 宇宙

13年8ヶ月ぶりとなる6作目。


様々な齟齬が目立つ。まずすぐ気づくのはヴォーカルの苦しさ。燦燦としたメロディは流麗なオーケストラやリズム隊のふくよかな躍動で強化され、「流動体について」「フクロウの声が聞こえる」などは特にハイからロウへの移行が派手。しかし本人の歌声は線が細いのに加えて悪い意味で加齢が感じられ、そのメロディを追うのに現在の力量以上のことをし過ぎな風に見える。そして楽曲。高品質な仕上がりだとは思います。ただ彼の過去作含め、90年代当時の渋谷系を熱心に通ってこなかった自分にとっても、四半世紀前の多幸的な煌めきをそのまま真空パックして持ち越した、というノスタルジックな印象を強く受ける。輝かしい未来を目指す歌詞のポジティブさも、そういった往年のムードをさらに助長。シーンの流行が何周も回り、希望よりも混迷ばかりが影を落とす令和元年において、この時代感の強いオプティミスティックな内容はなんだか離れ小島の蜃気楼のようで、どうにもリアリティが乏しく、カウンターとして捉えるにしても新鮮味の薄さが致命的だと思う。かつては時代の寵児と謳われた彼だからこそ、時代に馴染まない部分の違和感がどうも強く残ります。

Rating: 4.2/10



小沢健二『彗星』MV Ozawa Kenji “Like a Comet”