神聖かまってちゃん「メランコリー × メランコリー」ツアー @ 梅田CLUB QUATTRO

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ライブを見ながら色々な感情になっていた。




自分が彼らのライブを初めて見たのが2010年の3月。それから10年弱の時間が流れた。このバンドが10年弱もの時間を生き長らえるとは思ってもいませんでした。やはり彼らと言えば、中心人物の子の計算だか衝動だか判別のつきにくい破天荒なイメージが先立っていたので。ただ初期の頃こそ、その場のノリで何でもかんでも決めるのでグダグダになる時は本当にグダグダになったり、クオリティがなかなか安定しないという危うさがありましたが、実際の所そんなフェーズは何年も前の時点でとっくに脱却しています。フロアへのダイブを繰り返すなどの激しい挙動がありつつも、昔に比べれば良い意味でずっと真っ当になった。きちんと構成を決めて煽るべきところで煽る、適度に MC を纏めて次曲に繋げる、そういった当たり前のことをこなすだけでこんなに良いライブになるのかというくらい、彼らが持つポテンシャルは予想以上に大きい、そんなライブアクトとしての実力を今回もはっきりと感じ取れました。


個人的に彼らは銀杏BOYZサンボマスターなどと同じカテゴリ内に含まれています。全身全霊をフル稼働させての過剰とも言えるパフォーマンスで、腹の底から生命力を放射し、観客とのコミュニケーションを重視し、最も泥臭いやり方で自らの生き様をオーディエンスに刻み付ける、というような意味で。胸の内に巣食う魔物のようなネガティブさを振り切り、力づくにでも掻き消そうとポジティブなパワーを吐き出し続ける。外連味だらけだと分かっていても、傷だらけで転げ回るその姿にはどうしても胸を打たれてしまう、それくらいの力強さが彼らにはある。その思いは冒頭「知恵ちゃんの聖書」の時点で十分すぎるほど再確認できたし、あくまでも新譜「児童カルテ」のレコ発ツアーということで最近の楽曲がメインのセットリストだったのも、その力強い印象をより引き立てていたと思います。「静かなあの子」や「バイ菌1号」など、新譜の曲はメロディのポップさに磨きがかかっている曲が多いし、現在進行形たる姿をアピールするという狙いがダイレクトに伝わりやすかった。


途中「聖マリ」ではハプニング。曲終わりの所での子がギターを眉間にぶつけてしまい、Tシャツが赤色に染まるくらい派手に流血するという場面も。ここで気分が悪くなる観客もいたりで一時中断。の子は「もう俺ライブで流血とかしたくなかったのにな~」とバツが悪そうだった。昔なら衝動に任せて故意に自分を傷つけたりしていましたが、今回は単に不慮の事故であり、不本意な結果だから。しかし今の彼らはタフなもので、客を気遣いながらテンションを下げないよう全力のライブを続け、出来る限り誰も振るい落とさないようにしていた。そんな所でも彼らの成長を実感できたり。あと中断の間に世話役の立ち回りをするのはやはりちばぎんだった。ブレーキ踏み外しがちなの子を何とか誘導する苦労人のちばぎん。こんなやり取りを見ることは今後出来なくなってしまう。もちろん寂しい気持ちはある。しかし現在の彼らを見る限りでは、4人のバランスが崩れたとしてもバンドは何とか続いていくと思う。それくらい今の彼らの足場は固いものになっている、そんな風に見えます。


アンコール「あるてぃめっとレイザー!」で騒ぐだけ騒ぎきって終わりかと思われた最後、途中の事故に対するお詫びの気持ちもあったのか、急遽の子の提案で「匿名希望くん」を披露。この曲はぜひ聴きたかった。なんやかんやありながらも和やかな大団円で終了。「優しい夜はメロディが長い」。本当にそんな夜だったと思う。



セットリスト:
1. 知恵ちゃんの聖書
2. 静かなあの子
3. 毎日がニュース
4. ロックンロールは鳴り止まないっ
5. イマドキの子
6. Girl2
7. Os-宇宙人
8. るるちゃんの自殺配信
9. 友達なんていらない死ね
10. 聖マリ
11. 口ずさめる様に
12. 22才の夏休み
13. スピード
14. おやすみ
15. ぺんてる
16. バイ菌1号
17. フロントメモリー
(アンコール)
18. 怒鳴るゆめ
19. 自分らしく
20. あるてぃめっとレイザー!
21. 匿名希望くん