Algiers 「There is No Year」
米国アトランタ出身の4人組による、2年7ヶ月ぶり3作目。
聴き始めてから程なくして混乱をきたしました。まず第一にインパクトを受けるのはヴォーカル Franklin James Fisher の圧倒的な歌唱力。野性味と色気が激しく迸るそのスタイルは確実にソウル、ファンク、ブルースといった泥臭い方面の音楽性をルーツに持つはず。にも拘らず、その歌声を取り巻くサウンドはエレクトロニクス、しかも昨今の R&B などのような洒脱さからは程遠い、むしろ80年代インダストリアル、下手すれば Suicide の領域にまで迫るダークで粗野な響きが主体。果たしてバンド内でどのようなイニシアティブが働いているのか定かではありませんが、しかしながら結果として、その極端なミスマッチによってヴォーカルの魅力がひどく太い輪郭で浮き彫りになっているのが面白い。冷たく硬質なビートとヒステリックなノイズが交差する中、気高く朗々と声を響かせるヴォーカルの孤立感は際立ち、その対比がアルバム全体に蔓延する緊張感、ゴス的とも言える厳かで不穏なムードに深い奥行きを与えているように思います。歌と演奏が逆説的に相互作用するダイナミックな関係性、という意味では(方向性は全然違うけど)SOFT BALLET に近い気もしたり。
Rating: 8.2/10