Pale Saints 「The Comforts of Madness (30th Annivesary Reissue)」

The Comforts of Madness (30th Anniversary Reissue)

英国リーズ出身の3人組による、1990年作の30周年記念リマスター盤。

当時のシューゲイザーシーンにおける重要作として名高いこのデビューアルバムですが、今になって改めて対峙するとえらく奇妙な作りであることがよく分かります。と言うのも、今日においてシューゲイザーの一番の定義であるところの、ノイズやクリーントーンが渾然一体となるまで練り込まれたギターサウンドの重層、その心地良い浮遊感からはいささか距離のある音作りが数多く詰め込まれているからです。楽曲毎にギターのテクスチャーには多岐に渡るアプローチが施されており、中でも神経を激しく逆撫でする不協和音プレイ、また荒々しく迫るストロークには Sonic Youth などノーウェーブ方面からの流れを強く感じたりで、いかにも調合実験真っ最中という感じ。そして今回ボーナストラックとして追加されたアルバム曲のデモ音源を聴くと、そちらの方はこれぞシューゲイザーサウンドの典型と言える形で、ともすれば牧歌的な印象すらある。そこから察するに、彼らはこの作品でシューゲイザーの枠から抜け出すための次なる一手をすでに模索していたのではないかと。まだ「Loveless」どころか「Nowhere」すら出ていない時期に。急進派ならではの苦悩と緊張感。

Rating: 8.0/10