早見沙織 「シスターシティーズ」
- アーティスト:早見沙織
- 発売日: 2020/03/25
- メディア: CD
2018年作「JUNCTION」ではほぼ全ての楽曲が彼女自身のペンによるものでしたが、今作は全曲が外注。それも田淵智也、堀込泰行、NARASAKI と錚々たる名前が並んでいるわけですが、いずれの作家も早見沙織という人が何者であるかを十分に把握しているからか、「JUNCTION」で提示していたシティポップ路線を踏まえつつ、そこから少し枝葉を伸ばす、彼女の世界観を順当に拡張させる楽曲ばかりが揃っています。特に印象的なのはジャズやボサノヴァへのアプローチ。しっとりしたスウィング感を取り入れてますますアーバンな洗練に向かった「yoso」や、洒脱なアコースティックサウンドの中で物憂げな表情を浮かべる「ザラメ」「遊泳」など、いずれもジャズ要素が伸びやかな歌声を上品に彩る必須要素としてすっかり咀嚼されており、付け焼き刃だったり背伸びしているような不自然さを全く感じさせない。軽やかさや透明感の中に仄かな哀愁、微細な感情の揺れを含みつつ、あくまでも落ち着きを保った優美な歌の数々。その表現力が先述の「ザラメ」ではもはや新居昭乃の領域にまで接近しているようにも見える。まだまだ底知れないポテンシャル。
Rating: 7.7/10