清春 「JAPANESE MENU / DISTORTION 10」

JAPANESE MENU/DISTORTION 10 初回限定盤(特典なし)

JAPANESE MENU/DISTORTION 10 初回限定盤(特典なし)

  • アーティスト:清春
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: CD
約2年ぶりとなる10作目。


そもそも昭和時代の歌謡曲が一番の原点にあり、そのルーツを追究する意味合いも含めてアコースティックスタイルでの活動を展開しつつ、古き良きバッドボーイズ・ロックンロールへの憧憬も相変わらず根付いている、そういった経歴を持つ清春にとって、この作品はひとつの集大成と言える内容なのかなと思います。ガリッと歪んだギターサウンドが幅を利かせてはいるものの、冒頭の「SURVIVE OF VISION」と最後の「忘却の空」セルフカヴァー以外はベースレス編成。いつも通りの妖艶かつワイルドな魅力を目一杯に放出する一方で、その裏側にベタリと貼り付いている哀愁や空虚感が、低音部の空白によって一層浮き彫りにされているように感じます。グラムロックの陽性と国産フォークソングの陰性、相反するエッセンスがシンプルな音数の中に凝縮されているような状態。この深煎りの渋味こそ今現在の彼ならではのものでしょう。あと「忘却の空」はボートラ扱いではありますが、違和感なく収まることのできるアルバムを初出から20年越しの今作でようやく見つけられたという妙な感慨深さがありますね。少なくとも「BABYLON」の中詰よりは断然しっくりくる。

Rating: 7.1/10



【清春】「SURVIVE OF VISION」from『JAPANESE MENU / DISTORTION 10』【MV】