吉田一郎不可触世界 「えぴせし」

えぴせし

えぴせし

吉田一郎 (元 ZAZEN BOYS) によるソロユニットの、5年ぶり2作目。


前作「あぱんだ」よりも目指す的が絞られている印象を受けます。ざっくり言えばオルタナティブ R&B ということになるかと思いますが、どの曲でもシンセサウンドは80年代風の良い意味でのチープさを残した音作り、なおかつ隙間を活かしたラフな構築で深い奥行きを生み出すというバランス感覚の妙。その中でメロディは一貫して侘しさを滲ませ、歌詞の言語感覚ではシュールな遊び心も見せたり。一応ベースプレイも所々で挿入されてはいるものの、あくまで主役は彼自身の歌であり、ソングライティングであると。「phoenixboy」なんかはノスタルジックでドリーミーな感触が特にジワリと染み入ってくる。ただ全体的には、"不可触世界" と銘打つほどに孤高の領域に踏み出しているかと言うと微妙かな…というのも、中心にあるメロディがあまり良くない意味で俗っぽい進行になる瞬間がよくあるのですね。特に表題曲「えぴせし」のサビで見せる J-POP 感はどうも他所からの借り物感が否めず、サウンド面で生み出している絶妙な温度感を損なってしまっているように思う。ポップと実験の狭間を掻い潜る方向性は面白いですが、中途半端に陥ってしまってる気も。

Rating: 5.8/10



吉田一郎不可触世界 - えぴせし / Yoshda Ichiro Untouchable World - EPITHESI