Cloud Nothings 「The Black Hole Understands」


米国クリーブランド出身の4人組による、1年9ヶ月ぶり6作目。


今作は現在のコロナ禍の状況を踏まえて、通常のバンド編成によるスタジオレコーディングではなく、バンマス Dylan Baldi とドラマー Jayson Gerycz が各自で宅録したデータをやり取りする、言わばリモートレコーディングによって制作されたとのこと。その手法自体は決して目新しいものではないですが、彼らのようなパンクバンドにとってはこのプロセスの変化は大きな意味を成したようで、結果的に今作は彼らのカタログの中で最もポップ、なおかつスッキリと整理整頓された音像で非常に取っつきやすい内容となっています。 Jayson の手数の多いダイナミックなドラムプレイこそ健在なものの、Dylan はまるで憑き物が落ちたかのように穏やかで丸い歌声を聴かせ、ギターは歪みを抑えてジャングリーな軽快さが強調された音作り。ラウドな勢いよりも軽妙なメロディセンスが前に出た作風は彼らの初期作を彷彿とさせる部分もあり、そもそも最初期の Cloud Nothings は Dylan の一人宅録ユニットだったわけで、彼個人にとってはもしかしたら原点回帰的な意識もあったのかもしれません。鬱屈や後悔、自己嫌悪がこれまでにない涼やかさで鳴り響く10曲。

Rating: 7.9/10