Arca「Arca」
Björk との共同作業の中で大きく彼女に触発されたとのことで、今作が初の本格ヴォーカルアルバム。それも全て本人の歌声で、不明瞭なエディットを加えたりすることもせず、彼の歌声はサウンドの中でくっきりと際立ち、楽曲の主役を担っています。トラックは最小限の音数に絞られたアンビエント/エレクトロニカ。しかし和やかな印象はまるでなく、そのシンプルさに反比例して空気感はヘヴィ。何かを擦ったり引っ掻くような不可解な音も各所に散りばめ、聴き手にとことん不安や緊張を強いる。その中で揺らめく Arca の歌声はジャズ/シャンソンのような美しさと同時に、それこそ Björk であったり、もしくは Jónsi や ANOHNI などにも匹敵する、ある種怨念にも似た底知れないパワーを感じさせる。歌詞は彼の出自に拘って母国語であるスペイン語で書かれており、正直言って内容を理解することは出来ないのですが、その歌の中に秘められた言霊の凄まじさだけは掴み取れます。これまでの作品でも見せていた辛辣なまでの実験性、その音の迫力をすっかり凌駕する勢いで彼の歌は聴き手を飲み込んでしまう。彼の全貌がついに表れた、納得のセルフタイトル。
Rating: 9.0/10
ラッパ我リヤ「ULTRA HARD」
- アーティスト: ラッパ我リヤ
- 出版社/メーカー: SMM itaku (music)
- 発売日: 2017/03/29
- メディア: CD
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まず印象的なのが、かつての盟友 Kj(Dragon Ash)と再びタッグを組んだリード曲「My Way」。ミクスチャーロックの要素を含みつつも「Deep Impact」の再来というわけではなく、20年ほどの決して平坦ではないキャリアを経てきたもの同士だからこそ生まれるエモーション、そしてなお現在進行形であろうとする強い意志を示した、彼らの底力を感じる一曲です。この曲を聴くだけでも実感するのが、Kj はスタイルの変遷を経てもやはり Kj だし、ラッパ我リヤもまたラッパ我リヤのままだということ。トラックは昨今のトラップやダブステップを導入したものから、彼らの直接的なルーツであろう80~90年代風味のブレイクビーツ、またロック色の強いものまで様々。その中でも Mr.Q と山田マンの流儀は一貫しており、どちらのラップも愚直なまでに固い韻を踏み倒し、後ろノリの絶妙なリズム感でこれでもかと己を鼓舞し、誇示する。8年のインターバルの間にヒップホップのみならず音楽シーン全体が随分と様変わりしたかと思いますが、その中でも俺はコレだという図太い芯、ブレのない濃厚かつストレートなテイストを堪能できます。ウルトラハードの名に偽りなし。
Rating: 7.5/10