INORAN 「想」

想

1997年リリースのソロデビュー作が、ボートラ追加&ジャケ新装でリイシュー。


まず3度目の録り直しが行われたタイトル曲 「想」 について。正直この曲は録り直してほしくない。ミクスチャー風オルタナロックと化した前回の時もあまり良い印象はなかったのですが、今回はヴォーカルのみリテイク。確かに歌は圧倒的に巧くなった。ただこの曲の深く澱んだ空気の中で所在ない不安感を歌うには、一番最初の不器用で乾いた歌声の方が似合ってたし、味があったと思う。ただそれを差し引いても、アルバム全体の魅力は今でも変わらず強く光っています。本人が歌うのは 「想」 のみ、あとはゲストに国内外の女性シンガーやラッパーを招き、自身はほぼ裏方に徹するという実験的な内容。 INORAN 本人のカラーが見えづらいという難点はありますが、ミステリアスで美しい異国情緒を湛えた 「Monsoon Baby」 、仄かな暗がりの中で繊細に揺れる心を歌う 「FAITH」 、ダウナーなトリップホップ空間の中で語り部が生の正しさを問う 「Have You Read」 、そしてフォーク/トラッド調に乗せた童話的な詩世界が異色な 「人魚」 とクオリティの高い楽曲揃い。当時彼がヒップホップや R&B から受けた影響を反映し、自身のアルペジオと織り交ぜた意欲作。


Rating: 8.6/10
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