大森靖子 & THEピンクトカレフ 「トカレフ」

トカレフ

トカレフ

バンド名義としては初のフルレンス。


自分が大森靖子のライブを初めて見たのはTHEピンクトカレフを引き連れてのステージでした。今作の冒頭も飾っている 「hayatochiri」 での鮮烈な巻き舌シャウトに始まり、自身の感情をまるでセーブできないかのように、所狭しと動き回っては怨念にも似た絶唱を響かせていました。それは初見の聴衆にも十分深い爪痕を残すであろうアクトでしたが、思うところがあったようですでにバンドは解散を決定しています。ここに収録された楽曲は大森靖子ソロ曲のセルフカヴァーも多くありますが、打ち込みであったり整然とした音像にまとめられていた前テイクと比べると、インディバンドらしい荒さ、刺々しさが強調され、当然のように楽曲ともマッチ。例えば今作が 「魔法が使えないなら死にたい」 の次あたりに出ていれば、順当な進化としてこちらもすんなり納得できたかと思います。ただ広い視野と深い野心を持つ彼女はそれを良しとせず、我々の感情を逆撫でするかのように音楽性をアグレッシブに変化させ、短期間のうちにミュージシャン生命を燃やし尽くす勢いで生き急いでる。ここにあるのはインディシーンへの訣別のけじめ、作り忘れていた卒業アルバム。

Rating: 7.5/10



大森靖子&THEピンクトカレフ「 hayatochiri 」MusicClip - YouTube