Chelsea Wolfe 「Abyss」

Abyss

Abyss

カリフォルニア出身の女性シンガーソングライターによる、約2年ぶり4作目。


てっきりフォーク/カントリー系の人だと思ってたので、オープナー 「Carrion Flowers」 での嘔吐のようなヘヴィノイズに大きく仰け反ってしまった。完全に地獄の釜が開いた合図です。試しに過去作を遡ったところ、確かにフォークソングを基盤としつつもエレクトロやドローンなど他要素を貪欲に取り入れ、負の感情で満ち溢れたゴシックサウンドに仕立て上げるといった作風で、そこに漂う空気感はすでに十分ヘヴィな印象を植え付けるものでした。そして今回では Russian Circles のメンバーもゲスト参加し、スラッジーなギターサウンドを導入して物理的にもヘヴィネスを獲得。切れ味鋭い爆音はまるで誰かの断末魔を模したような、強烈な悲愴感を伴って響いてくる。しかし彼女が完全にメタルへと方向転換したかと言うとそうでもなく、確かにバックの演奏は大胆にメタルへと舵取りしてはいますが、あくまで彼女の真綿で首を絞めてくるような歌声がメインを張っており、フォーマットとしては間違いなくフォークソングなのですね。劇的なダイナミズムを陳腐な張りぼてとせず、歌の一部としてきっちり消化して見せた暗黒盤。

Rating: 7.9/10



Chelsea Wolfe - Carrion Flowers (Official Video)