LISACHRIS 「Akasaka」

Akasaka

Akasaka

ニューヨーク出身のプロデューサーによるデビュー作。


その出で立ちからはパーティーピーポー気質の人なのかなと勝手に想像していたのですが、実際の楽曲はむしろ繊細で理知的、ともすれば瞑想的にも見えるものでした。構造としてはダブステップ/トラップ以降のなだらかなグルーヴが基本にあり、可聴域の外側へと迫るベースラインが密かに唸りを上げながらも、ビートの質感は柔らかで横ノリの心地良さが際立つ。そして上モノはアンビエントの仄暗い浮遊感を膨らませ、そこにフォーク/トイトロニカに通じるささやかな装飾を散りばめるという、実験的かつポップという印象も残る仕上がり。UCARY & THE VALENTINE 参加の「ame」や「ashra」では特にそのドリーミーな感覚が際立ち、何なら新種のエレクトロ・ゴスポップとでも言えそうな音像ですが、そういった不可思議なムードと話し口調の醒めたヴォーカルが交錯しているせいか、完全に夢の世界へドップリとはいかずに、まるで夢と現実の狭間をふわふわと漂う、浅い眠りがずっと続いているような錯覚が訪れる。このバランス感覚は狙っているのか自然体なのか、いずれにせよ奇妙な中毒性です。ただ 5lack 参加の「サワゴゼ」だけはビシッと挑発モード。

Rating: 7.1/10