Radiohead「A Moon Shaped Pool」

A Moon Shaped Pool[輸入盤CD](XLCD790)

A Moon Shaped Pool[輸入盤CD](XLCD790)

約5年ぶりとなる9作目。


In Rainbows」「The King of Limbs」と続いて、さすがに彼らも結構なベテランだし落ち着くところに落ち着いてきたかな…と思っていたところからのこれです。従来のエレクトロニクスに加えてピアノ/ストリングスの比重が圧倒的に増し、不定形に編集されたヴォーカルやバンドサウンド、細部まで至る音響処理の精度も凄まじく、ひとつの大きな河を成すように全てのテクスチャーが融和して、もはや畏怖すら感じさせるほどの美しさを体現しています。過去の曲で言えば「Pyramid Song」の濃密かつ幽玄な空気感がさらに煮詰められたような感覚が近いか。しかしヘッドフォンで聴いてみるとよく分かりますが、とにかくディテールへの拘りが尋常じゃない。数多くの仕掛けが細かな場所に張り巡らされており、繰り返し聴くたびに新しい音が見つかるのではという気すらする。そして Thom Yorke のしなやかな歌声は端的な言葉でリスナーに内省を促し、警鐘を鳴らし、心に露を纏わせる。深遠な楽曲と相まってその説得力は弥増し、聴いているうちに深い水の底へと引きずりこまれるような心地に。改めて化物のようなバンドだと再確認しました。

Rating: 9.0/10



Radiohead - Burn The Witch

GOMESS「情景 -前篇-」

情景 -前篇-

情景 -前篇-

静岡出身のラッパーによる、1年ぶり3作目。


GOMESS の存在は高校生 RAP 選手権で初めて知って、その時のパワー重視な威勢の良い即興ラップがとても印象に残っていただけに、その後のフリースタイルダンジョンで再度彼の姿を見た時は良くも悪くも衝撃的でした。10代の頃よりさらに内省的でナイーブな姿の彼は、様々なことで思い悩みすぎて精神的に追い詰められてないかという、何だか親の心境になってしまったものです。この作品で彼はラップというよりポエトリーリーディングの手法を用い、低くくぐもった声で吐き出される不安、失望、自己嫌悪の言葉の数々。ただそれは単なる後ろ向きの呪詛ではなく、まだ見えない希望へと救いの手を伸ばそうとする青い痛み。またゲストにはモデルやグラビアアイドルなどの決して器用ではない歌/声を起用したり、トラックもピアノの音色をフィーチャーしたシンプルなものだったりと、所謂ヒップホップの様式からは随分と逸脱し、ジュブナイルのみが持つ繊細な感情の刃、その生々しさを打ち出すことに主眼が置かれています。この実験的な内容は確実に好き嫌いを分けるかと思いますが、どちらにせよ聴き手に静かに切り傷をつけるはず。

Rating: 6.7/10



GOMESS / Fake (映画「Heavy Shabby Girl」劇中歌)-MV EDIT-