PELICAN FANCLUB「OK BALLADE」

OK BALLADE

OK BALLADE

2012年結成の4人組による、10ヶ月ぶりミニアルバム3作目。


ラフさと緻密さのちょうど良いバランスで掻き鳴らされるオルタナティブの爆音。彼らの曲を聴いているうちに ART-SCHOOLTHE NOVEMBERS の名前が脳裏をよぎる。つまりは UK PROJECT の申し子と言ってもいいかもしれません。今作ではそこに Galileo Galilei が持っていた歌声の清冽とした輝き、ナイフの切っ先のような美しさと冷たさを併せ持った歌詞世界もある。そういった影響先が透けて見えながらも、彼らならではと言えるアイディアは曲毎に多彩な形で生かされています。「記憶について」や「Ophelia」などのキャッチーで瑞々しい疾走曲がメインを占めつつ、ノイジーな爆音と狂気が堰を切って溢れ出す「for elite」「説明」、メロディの翳りが心地良く浸透するファンクチューン「M.U.T.E.」も面白いアクセント。陰と陽の両極端へとダイナミックに振り切れた方向性、それらは完全な乖離ではなく、何かの切っ掛けで簡単にシフトする感情の両面性として違和感なく共存しています。ここには音楽の形態としてのバラードはありませんが、内なる感情の激しさを詩的な表現に託して歌うのがバラードであるなら、アルバム表題は理に適ってますね。

Rating: 7.4/10



PELICAN FANCLUB - 記憶について(MV)

Hi'Spec「Zama City Making 35」

Zama City Making 35

Zama City Making 35

SIMI LAB のトラックメイカーによる初のソロ作。


客演に OMSB や RIKKI が参加しているのもあり、SIMI LAB の先鋭的なアンダーグラウンド色が今作にもそのまま通底しています。スクエアな拍子から絶妙にビートをズラしたダルなグルーヴ、この揺らぎの違和感によって妙に不穏なムードが生まれ、それが中毒性の高い心地良さへと転じる。そこへ多角的に神経を刺激するノイジーな上モノ、さらにはジャズ/ラウンジ風の洒脱なメロウ感も挿入し、甘く苦々しい実にドープな味わい。超ハードコアな言葉の飛礫がビシビシ突き刺さる「BUG」「タコナスボケ」といったアグレッシブな曲から、深い微睡みを覚える「D.F.TH.」、ノスタルジックな回想から現在へのリリカルな描写が秀逸な「Goin Back To Zama City」まで。各々のキャラクターがはっきり表れた適材適所のゲスト起用もさることながら、曲の色合いを少しずつ移ろわせつつ、常に裏路地の暗がりに蔓延る緊張感、迂闊に触れると傷つきそうな鋭さをサウンドの裏や表に感じさせる、このギラついた感覚に妙に惹かれてしまうのですね。先日の STUTS 新作が作り上げていた華やかさとはちょうど対照的な、薄暗い炎が紫煙を燻らす地下室のパーティー

Rating: 8.2/10



Hi'Spec "Goin Back To Zama City feat. OMSB"