坂本慎太郎「できれば愛を」

できれば愛を(初回限定盤)

できれば愛を(初回限定盤)

2年2ヶ月ぶりとなる3作目。


アルバムテーマは「顕微鏡で覗いたLOVE」。まあ何を言ってるか分からないのは割といつものことなのでね。前作の「ナマで踊ろう」であったり、ゆらゆら帝国での「空洞です」「Sweet Spot」なんかはスカスカの音の中にも奇妙な濃密さ、空気の重たさが感じ取れたのですが、今回は本当にスッカスカ。通常のバンド編成にスティールギターやフルート、女性コーラスを乗せて AOR 風のスウィートでメロウな感触を与えつつ、徹底的に隙間を置くことを意識した音作りがその AOR 感を敢えて無化し、結果として着地点のない宙ぶらりんな感覚ばかりが残された、何とも居心地の悪い空間が出来上がっています。曲タイトルとは裏腹にシュールな哀愁が漂う「超人大会」、もはや笑わせに来てるとしか思えない「鬼退治」、また「マヌケだね」「ディスコって」の小気味良いファンク曲2連発にしても、すっかり肉体性から距離を置いた軟体動物のような掴みどころのなさが、素直に心地良いと感じることを良しとしない。現在の彼が目指している音楽性が、またひとつ無駄を削いでコアの部分へと到達した作品。ありのままでもできれば愛してほしい。

Rating: 7.6/10



できれば愛を (Live In-Studio Performance, 7/12/2016) / 坂本慎太郎 (zelone records official)

キノコホテル「マリアンヌの革命」

マリアンヌの革命【初回限定盤】 (CD+DVD)

マリアンヌの革命【初回限定盤】 (CD+DVD)

2年2ヶ月ぶりとなる5作目。


グループサウンズ。さすがに5作目ともなるとデビュー当初に打ち立てた設定、コンセプトを真っ新にしてイメージの脱却を図るパターンが多い中、この初志貫徹っぷりはいかに彼女たちが筋金入りのトリックスターであるかが伺えますね。ただ焼き直しを繰り返してるわけではなく、絶妙に80年代サーフ感の入り混じった「おねだりストレンジ・ラヴ」や、オートチューンを取り入れた「流浪ギャンブル」、クラウトロックのミニマルな恍惚が世界観の奥行きを拡張する「遠雷」「赤ノ牢獄」と、他ジャンルを貪欲に飲み込んで消化してしまう胃袋の強さが随所に活かされてる。一番の基礎となってるのは確かに昭和 GS なのですが、それも今の彼女たちにとってはあくまでも表現の一手法に過ぎず、サディスティックな愛欲が渦巻く革張りの夜、その刺激的な情景を彩るものであれば何でも構わないのでしょう。マリアンヌ東雲のヴォーカルもいつもよりエロティシズム2割増しくらいに聴こえるのは気のせいか。世の中にエロの形は数あれど、彼女のようにコテコテで下世話、なのに妙にスタイリッシュというのは、最近ではあまり類を見ないものでは。やはり昭和は偉大だ。

Rating: 7.4/10



キノコホテル / おねだりストレンジ・ラヴ(short version.)