Campanella「PEASTA」

PEASTA

PEASTA

愛知出身のラッパーによる、2年ぶり2作目。


アルバムタイトルの PEASTA って何ぞやと思って調べたら、愛知にそういう商業施設があるんですね。今回参加してるトラックメイカー、ゲストラッパーも皆が愛知出身。あくまでも地元レペゼンに拘る姿勢はいっそ清々しいものがある。楽曲の方はダブステップ/トラップを下敷きとしつつ、さらにビートは解体されて曲によっては IDM かというフリーキーさ。アンビエント風の心地良い浮遊感の中、至極シンプルなビートの飛礫がゆらゆらとした不可思議なグルーヴを生み出す。例えば Four TetPrefuse 73 などに通じる幻想的な心地良さ。Campanella のハイトーンラップもそのグルーヴに身体を預けるように柔軟なフロウを見せており、流行の先端からもう一歩その先を目指そうとする野心を音の裏側に感じます。ただレイドバックしてるばかりではなく、「KILLEME」や「Shoo-in」といった中盤ではアンダーグラウンドの危険なキナ臭さを匂わせたりも。そして終盤「YUME no NAKA」はサウンド的にも歌詞的にも Y'S「夢の中」に通じる、穏やかながら底知れずエモーショナルな一曲。一見フラットで取っ掛かりが難しいけど、実は多面的な楽曲群。

Rating: 6.9/10



Campanella - Birds Prod by Free Babyronia (Official Music Video)

downy「無題 (6th)」

第六作品集『無題』

第六作品集『無題』

約3年ぶりとなる6作目。


これまでの作品と違う試みは随所に現れています。目立つ箇所で言えば、「檸檬」でのコントラバスを用いたジャジーな感触とシンセの装飾。これまでもギターのみでシンセと見紛うようなエフェクティブな音作りを実践してはいましたが、今回は比較的識別しやすい形でシンセのテクスチャーを導入し、よりポストロック/マスロックらしいインテリジェントな構築性をアピールしています。また前作に引き続いて、今まで演奏に紛れて輪郭の不明瞭だったヴォーカルがグッと前に出てきており、「海の静寂」でのブルージーな翳り、熱唱と言えるくらいの力の入り様には改めて驚かされる。そしてリズムセクションの力強さもこれまで通りで、特にドラムンベースとスカを人力で魔合体させたような「色彩は夜に降る」、サイケデリックな混沌へと高速で突入していく「乱反射」などは思わず息を飲む。ただ今までが強烈すぎたというのもありますが、全体的には downy にとっての新たな発見という意味ではいささか弱い。彼らの作品で初めて、変化することに対して良くも悪くも慎重、堅実な印象を受けたのですね。もちろん他と比べれば圧倒的にハイレベルではあるのですが。

Rating: 7.2/10



downy - 凍る花