有村竜太朗「個人作品集1996-2013「デも / demo」」

デも/demo(初回生産限定盤A)(DVD付)

デも/demo(初回生産限定盤A)(DVD付)

Plastic Tree のヴォーカリストによる初ソロ作。


結成から20年を超えるベテランでありながら、未だフォロワーらしいフォロワーが現れてこない Plastic Tree 。そもそもV系界隈に80~90年代のオルタナティブロックのインプットを持つ人材が少なすぎるというのもありますが、文学的、幻想的な彼らの世界観はシーンの中ですっかり独自のポジションを獲得しており、その核を成す部分がこの作品には表れています。ゲスト演奏陣には 'te や chouchou merged syrups. のメンバーに加え、小林祐介波多野裕文といった盟友も参加。「浮融 / fuyuu」ではシューゲイザー直系の不協和音ギターが轟々と唸りを上げ、「猫夢 / nekoyume」では直線的な疾走感の中に憂鬱と哀愁が深く匂い立ち、「恋ト幻 / rentogen」ではエレクトロニカ基調の柔らかな空気感の中、刹那的な感情の揺れが竜太郎ならではのタッチで描かれる。詞世界に寄り添う音を常に意識してきたであろう彼だからこその、淡いながらも色彩豊かで奥行きのある音像。ただゲストと竜太朗の波長がいささか合いすぎてるからか、良くも悪くもプラ本隊の延長線上に留まり、課外活動ならではの新しい発見というのは少ない。ここから更なる発展の予定はあるんだろうか。

Rating: 6.5/10



有村竜太朗「浮融 / fuyuu」

LITE「CUBIC」

CUBIC

CUBIC

約3年半ぶりとなる5作目。


ポストロック/マスロックというと小難しく堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、ここで彼らが鳴らす音からはとてもしなやかな自由を感じます。パズルのピースを嵌め込むように断片的に鳴らされる各パート。それらは音響系エレクトロニカを人力で再現したようでもあるし、ファンクグルーヴの挑戦的な解釈でもあり、時にはジャズやフュージョンの艶やかな感触も顔を覗かせる。タイトで図太いリズム隊のフィジカルな躍動感と、開放的な奥行きを感じさせるギターフレーズ。以前から少しずつ試みている歌モノへのアプローチも今回は「Warp」や「Zero」といった楽曲で見られるし、これまでの彼らを構成する諸要素がより自然な丸みを帯びた形となり、ある種の円熟味とも言える豊かな表現を見せています。特に唸らされたのは中盤。ワイルドなドライブ感と大胆な緩急をつけた構成でグイグイ惹き込む「Angled」、そしてキナ臭いムードを演出するタブゾンビのトランペットを従え、絶妙なスカ要素の加味によってグルーヴの強さに拍車がかかる「D」。ここには確かに Battles も Tortoise もある。しかしそれ以上の刺激的なアイディアも盛り沢山です。

Rating: 8.0/10



LITE / D (feat.TABU ZOMBIE)