The Willard「Romancer」

Romancer

Romancer

約10年半ぶりとなる11作目。


ロックバンドはいつから車を、酒を、夢を、愛を歌わなくなったのでしょう。物心ついた頃にはロックはすでに片田舎の学生の手にまで渡り、日常の風景や悩みを訥々と歌ってみたり、少し背伸びして社会情勢なんかにケチをつけてみたり、随分と身近でカジュアルなものになってしまった。それも決して悪くはないけれど、何だか寂しさを覚える時もある。たまには目が眩むほどギラギラしたロックスターの魅力に、全てを忘れて没頭していたい。そんな貴方にはウィラードです。なにせ冒頭から「イカれたランチェロのベッドの上には Motor Psycho」ですからね。The Damned 直系のパンクロックにブルースやハードロックのエッセンスも混ざり、ゴシックあるいはグラムの色気もムンムン。パワフルかつ勇壮な気高さを感じさせる Jun の歌は、徹底してこの世ならざる楽園を夢見ています。快楽と背徳、刹那の狂騒が渦巻くロックンロール・ユートピア。もちろん時代錯誤です。今更流行るはずもない。だが夢の国のエンターテインメントに時間の流れが必要だろうか?この道およそ35年の大御所が改めて提示するロックの本来的魅力。VAMPS のファンもどうぞ。

Rating: 7.0/10

SUGIZO「音」

音

オリジナルとしては5年ぶりとなるソロ5作目。


「怒り」が今作のテーマであるとのことですが、例えば以前の「ENOLA GAY」や「NO MORE NUKES~」のように、怒りの矛先を明確に示した楽曲は今作にはありません。しかし実際の楽曲を聴けば、SUGIZO が現代の世界に対していかに怒りや失望、遣る瀬無さを覚え、それでも前を見つめて光を掴むための強さを欲しているかが、その楽曲から掴み取れるかと思います。散弾銃のような強烈なブレイクビーツが襲い掛かる「IRA」に始まり、ロックあるいはインダストリアル色の強い「Decaying」「禊」、またクリーントーンによる耽美的な透明感を主とした「Raummuzik」「Proxima Centauri」にしても、常にアタック感の強いビートが聴き手を睨み付けるようにしてボトムを蠢き、緊張の糸を緩めることがないように存在感を放っています。なおかつ多くの楽曲で使われている奇数拍子/変拍子が、聴き手を翻弄しつつも心地良いグルーヴを醸し出し、重苦しいばかりではないしなやかさを楽曲に付与。もちろん SGZ 印のギタースクリームも随所に盛り込み、彼の内なる叫びがますます鬼気迫るヘヴィなものとして噴出した、辛辣なまでにイズムを感じさせる「音」です。

Rating: 8.2/10



SUGIZO / Lux Aeterna