パスピエ「&DNA」

1年4ヶ月ぶりとなる6作目。


作品を重ねるごとに BPM はライブ向けの速さに、アレンジは密度を増す方向に向かっていた彼ら。ここで少々揺り戻しが働いています。メロディは相変わらずの高性能なポップネスを保ちつつ、アップテンポな楽曲でもあくまで瑞々しさや切なさを立たせるように、バックはほどほどの情報量に抑えて風通しを良くした仕上がり。特に耳を惹いたのは彼らならではの和メロセンスの良さを再確認できる「永すぎた春」、アンビエント風の透明感が際立ったシンセポップ「DISTANCE」、同じく透明度の高いシンセと軽やかな疾走感の中に寂寥も入り混じる「スーパーカー」あたり。以前よりも肩の力が抜けて落ち着いたぶん、彼ら本来のしなやかさや飄々とした感覚が改めて浮き彫りになり、なおかつメジャーバンドらしい窓口の広さ、密かにエモーショナルな表情も見られるという。もはや手練れの余裕すら感じるのですが、この方向転換はここ最近の挑戦的な作品からの反動であると同時に、昨今のロックフェス対応化のムーブメントから抜け出して自身の表現を目指していくという宣言なのかもしれませんね。何にせよ、彼らのクリエイティヴィティは未だ健在。

Rating: 7.4/10



パスピエ - メーデー, PASSEPIED - Mayday [Short Ver.]

Suchmos「THE KIDS」

THE KIDS(DVD付)

THE KIDS(DVD付)

神奈川出身の6人組による、1年半ぶり2作目。


最近の若手では珍しいくらい明確にスターダムを志し、それ故に不敵、不遜とも取れる発言の目立つ彼ら。実際に予想の随分上を行く勢いで売れているわけですが、確かによく出来てるのですよね。ファンク/ソウル/ヒップホップのグルーヴを体得し、グッと重心を落としたリズム隊の力強さがどの曲でも効いてる。アーバンに洗練されたムードが通底しつつ、歪んだギター/ベースが噛んでくる場面ではハードロックに通じる泥臭さも感じられたり、エレクトロニックな質感と真っ当にロックバンドらしいダイナミズムの共存、それは所謂ミクスチャーロックのイメージを刷新するには十分な説得力を持ってると思います。最近のインディシーンにおけるシティポップの潮流はもちろん、オーバーグラウンドの EDM 好きパーティーピーポーにも対応し得る、懐の深さと器の大きさを兼ね備えたサウンド。ただ自分にはどうも隙がなさすぎて味気なく聴こえてしまうのと、有機的でありながらダンスフロアの機能性に寄り過ぎてる気もして、その熱狂に溶け込めずに遠くから眺めてるだけの寂しさを覚えるのも事実。まーこんな天邪鬼が出てくるのもスターの条件じゃないですかね。

Rating: 6.8/10



Suchmos "A.G.I.T." (Official Music Video)