Lorde「Melodrama」

Melodrama

Melodrama

ニュージーランド出身のシンガーによる、3年9ヶ月ぶりとなる2作目。


世界を制したデビュー作「Pure Heroine」のリリース時点で彼女は16歳。そして現在は20歳。年齢を確認してるだけでなんだか眩暈がしてきますが、16歳から20歳に至る間の年月が人を大きく変えることは自明の理であるかと思います。彼女のふくよかで情感に満ちたヴォーカルは元々その若さにそぐわない貫禄を見せていましたが、前作の時点ではまだメインストリームへの目配せとも思えるライトな質感、またはあどけなさのような印象もありました。ここでの彼女はそういった殻をすっかり脱ぎ捨てています。真に迫ったミッドロウからシアトリカルにも映るハイトーンへとしなやかに広がる、その様は何処となく Kate Bush 、あるいは Natasha Khan を彷彿とさせる。つまりはシャーマニックな凄みすら感じさせる、祈りにも似た歌声。ここで歌われていることは愛する人との一時、離別、そして前へと目線を向ける強さ。それこそ表題の通りメロドラマチックな、俗っぽいと言ってしまえばそれまで。しかしそれがここまでシリアスでエモーショナルな表現にまで昇華されているのは、この数年における彼女の経験がいかに濃密なものだったかの裏付けなのでしょう。

Rating: 8.5/10



Lorde - Green Light

Ride「Weather Diaries」

Weather Diaries

Weather Diaries

約21年ぶりとなる5作目。


所謂シューゲイザー御三家の中でライドだけは、他の二組と少々異質な印象を自分は受けています。もちろん空間を埋め尽くす轟音ギターノイズという点では共通していますが、彼らの持つ朗らかなポップセンスやリズムの高揚感は、靴よりもむしろ高らかな空を向いているように思うからです。陶酔や実験性ばかりに向かうのではなく、当時のオルタナティブロックやブリットポップと共振する部分も多い、王道的 UK ロックの延長線上に位置する音。だからこそブリットポップをほとんど通過してない自分にとっては、マイブラやスロウダイブに比べて響く部分が少なかったのですけども。そしてこの新作。張りのある大文字のロック感がありつつ、アンニュイな翳り、緻密に練り込まれた空間的サウンドの重層といった、従来の彼らを成す主要素が現代風に洗練され、なおかつ長い年月を経たが故の落ち着き、渋味のようなものも感じられます。特に「Charm Assault」や「All I Want」でのバンドサウンドの作り込みとポップネスとのバランス感覚など、ちょうどインディロックの模範とも言えるような、オーソドックスながら実に丁寧な仕事。確かにこれはライドの新譜。

Rating: 7.4/10



Ride - All I Want (Official video)