minus(-) 「R」

R

R

ミニアルバムとしては1年9ヶ月ぶり3作目。


昨年に森岡賢が逝去し、藤井麻輝のソロユニットとなった minus(-) 。方向性としてはやはりという感じで、森岡賢が担っていたアッパーでポップな要素は後退し、藤井麻輝イズム全開の冷徹インダストリアル・ナンバーがメインを占めています。重々しくソリッドに洗練されたビートに、荒涼とした雰囲気を漂わせる憂鬱なメロディ。各楽曲にゲストヴォーカルが配されて一応歌モノの体裁を取ってはいるものの、それは取っつきやすい外向きの印象に仕上げるというよりは、楽曲の持つ世界観をより深遠なものとするための必須要素。異国情緒の入り混じった艶めかしさが印象的な「Below Zero」、まるで深海のような神秘的な美しさを見せる「Drop」、情感豊かで壮大なバラード曲「Spell」と、いずれもかつての睡蓮にもダイレクトに繋がる、ダークで無機質な中に一筋のロマンチシズムを垣間見せる音像は藤井氏ならではのもの。唯一のアップテンポ曲である「LIVE-advanced」も、フルレンス作「O」収録のヴァージョンより上モノの派手さが抑えられ、インダストリアル由来の攻撃性が強調された仕上がりに。改めてゼロから始まった彼の流儀を感じさせる一枚です。

Rating: 7.5/10



minus(-) / 「Spell ver1.0」 from New Mini Album「R」

Chelsea Wolfe 「Hiss Spun」

HISS SPUN (ヒス・スパン)

HISS SPUN (ヒス・スパン)

カリフォルニア出身のシンガーソングライターによる、約2年ぶり5作目。


前作「Abyss」から大幅にフィーチャーしていたドゥームメタル路線を今作でも踏襲。しかも今回は録音に Kurt Ballou (Converge) 、ゲストギタリストに Troy Van Leeuwen (QOTSA) 、そして Aaron Turner (Isis) まで参加という盤石の体制が取られています。フィードバック混じりの厳ついスラッジ・ヘヴィネスが全編において炸裂し、その中で浮遊するチェルシー本人のたおやかな歌声は聴き手にジワジワと呪いをかけるかのよう。密度濃く歪んだ不協和音が覆い被さるリードトラック「16 Psyche」、アーロン御大の絶叫がますます重苦しさに拍車をかける「Vex」、そして怨念の深さがピーク値に達する「The Culling」「Twin Fawn」など、いずれにおいても彼女の内に潜む漆黒の世界観が極めてパワフルな形で顕在化されています。ただ随所で顔を覗かせる元来のフォーク要素やエレクトロニックな質感のせいか、シアトリカルなゴシックメタルでありながら大仰になりすぎない内省的な雰囲気がアルバム全体に通底しており、そこから生まれる感情表現の生々しさこそが彼女のオリジナリティを成しているのだと思います。一層真に迫った力作。

Rating: 8.3/10



Chelsea Wolfe - 16 Psyche (Official Video)