Four Tet 「New Energy」

New Energy

New Energy


ロンドン出身、 Kieran Hebden によるソロユニットの2年2ヶ月ぶり9作目。


前作「Morning/Evening」は2曲40分という極端に振り切れた作品でしたが、今作はちょうど反動のように、Four Tet のカタログの中でも特に取っつきやすい内容に仕上がっています。雅やかな弦の音色がミステリアスな空気を醸し出す「Two Thousand and Seventeen」や、子供のヴォイスサンプルが牧歌的な多幸感を生み出す「Daughter」では初期のフォークトロニカ路線を再提示。その一方で「There is Love in You」以降のダンスプロパーな作風を踏襲したた4つ打ちハウス/トランス曲の「Lush」「Planet」などがアルバムの中でハイライトの位置に据えられており、言わば彼のこれまでの全キャリアを総括したような楽曲群。しかしながらいかにも集大成といった重厚さはあまりなく、そのノスタルジックな暖かみと軽やかな風通しの良さからは、過去を踏まえつつあくまで新しいサウンドスケープを生み出していくというポジティブな広がりを第一に感じます。アンビエントの静謐とミニマルの恍惚、そしてポストロック由来のカタルシスも織り交ぜた、正しく Four Tet 印と言えるインストポップ集。現在においても彼は新鮮な異種であることをここで証明しています。

Rating: 8.1/10


soundcloud.com

Kamasi Washington 「Harmony of Difference」

Harmony of Difference [帯・解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (YTCD171JP)

Harmony of Difference [帯・解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (YTCD171JP)

カリフォルニア出身のサックス奏者による初の EP 作品。


今作は前半と後半の二篇に大きく分けられます。前半は「Desire」「Humility」「Knowledge」「Perspective」「Integrity」と名付けられた全5章の組曲。味わい深いコントラバスに始まり、各パートの音色が徐々に立ち昇って有機的に絡み合いながら、章が移り変わるごとに緩急の切り替えをスムーズかつ鮮やかにこなし、実に情感豊か、彩り豊かなパノラマの光景を音の中に浮かび上がらせています。そして後半に当たる13分の大曲「Truth」ではやはり軽やかな場面転換を見せつつ、荘厳なゴスペルコーラスも加わってなお世界観が広がり、もはやスピリチュアルとも言える深淵へと突き進んでいます。いずれにおいても饒舌なテクニックと優美なムード、その内に潜むエモーショナルな熱量といったジャズ本来の魅力を存分に発揮しながら、エレクトロニカ/ポストロック的な意匠を凝らした音響処理は他のジャズには無い圧倒的なスケール感を生み、主張の強いパワフルなうねりを見せるリズム隊はアンサンブルに緊張感を与え、楽曲の持つダイナミズムをさらに底上げしてる。前作「The Epic」で見せた小宇宙を32分に濃縮した、ひとつの感動的な音楽体験です。

Rating: 8.8/10



Kamasi Washington - Truth