Amnesia Scanner 「Another Life」

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フィンランド出身の2人組による初フルレンス。


まずそのドギツい音像で脳天に杭を打ち込まれたような心地になる。中音だけがゴッソリ抜け落ち、ハイとローが極端に強められて鋭利な攻撃性を持ったノイズ・エレクトロニクス。内臓から身体を震わせるベース音と空襲警報のごとき上モノシンセ類は、インダストリアルあるいはメタル畑からの影響も感じさせつつ、確実に聴き手に恐怖や嫌悪感を与える、極めてグロテスクなもの。中には女性ヴォーカルがフィーチャーされている楽曲もいくつかあり、そこでは例えば Sleigh Bells や Crystal Castles を想起させる部分もありますが、AS の場合はよりフリーキーで実験的、もっと言えば悪意的な印象すら受ける粘着質なダークネスがインパクト大。しかしながらそういった辛辣な音の中によく目を凝らすと、メロディやリズム構成にはむしろ EDM やダブステップなどのメインストリームを意識したポップな感触が見えてきます。グシャグシャに歪んではいるものの「AS Another Life」「AS Too Wrong」などは確実に昨今の R&B が基盤にあるものだし、終盤「AS Securitaz」で見せるエモーショナルな悲愴感には思わず胸を打たれもする。ミュータントポップ急先鋒の怪作です。

Rating: 8.0/10



Amnesia Scanner - AS A.W.O.L

Pig Destroyer 「Head Cage」

Head Cage

Head Cage

US はヴァージニア出身の5人組による、約6年ぶり6作目。


2004年作「Terrifyer」を初めて聴いた時の衝撃は忘れられません。鼓膜にザクザク突き刺さるヘヴィネスの鋭さと肉々しさ、そして瞬時にパターンを切り替えるリズム隊の異様なフットワークの軽さ。1~2分程度の楽曲を矢継ぎ早に畳み掛けるグラインドコアならではの暴力性と、本能的な快楽原則にとことんまで拘ったが故のキャッチーさが際立った、日頃のストレスも瞬時に打ち砕いてくれるヒロポン的傑作でした。もちろんそれ以降の作品でも Pig Destroyer は全く間違いを犯していません。今回はこれまでベースレス編成を続けていた彼らにとって初となる正式ベーシスト参加作。鋼鉄の鞭を大きくしならせるような重低音ベースは終盤の「The Last Song」「House of Snakes」で特に存在感が顕著ですが、それ以外の楽曲でもヘヴィネスをさらに重厚なものとしつつ瞬発力は全く落とさず、アンサンブルを更なる高次元へと押し上げています。従来の不意打ちショートチューンのみならず「Army of Cops」「Concrete Beast」のようにグルーヴ感を強く意識したものもあり、もしかすると彼らのキャリア中最も取っつきやすいかもしれない充実作。

Rating: 8.4/10



PIG DESTROYER - Army of Cops (Official Music Video)