Behemoth 「I Loved You at Your Darkest」

ポーランド出身の3人組による、約4年半ぶり11作目。


語弊を恐れずに言えば、これは Behemoth 史上最もユーモラスなアルバムかもしれません。もちろん彼らの信条であるデス/ブラックメタル由来のブルータルな攻撃性は健在。ただ今作はそこばかりに重きを置いておらず、こちらの意表を突いてのあどけない子供コーラス、グレゴリオ聖歌風の荘厳なクワイア、またギターフレーズには悲愴や切迫を感じさせるナイーブな叙情性もそこかしこに表出し、「We Are the Next 1000 Years」での複雑なテクスチャーの重層が浮遊感を醸し出す様子は Alcest や Deafheaven などポストメタル勢に通じる美しさ。あの手この手で様々なアイディアを盛り込んだ結果、彼らの宗教的世界観がますますパノラミックに広がり、まるで一大オペラのごとく重厚かつドラマチックな流れを構築しています。その上で従来のアグレッションは全く損なわれることなく、むしろリード曲「God=Dog」などは特に、キャッチーな即効性と禍々しいムードを一層増して凄まじい殺傷力と化しているのだから唸る他ない。活動歴20年以上の大ベテランにも拘らず、ここに来て更なる深化と窓口の拡張を同時に遂げて見せた傑作です。

Rating: 8.7/10



Behemoth - God=Dog (Clean Version)

Anaal Nathrakh 「A New Kind of Horror」

A NEW KIND OF HORROR [CD]

A NEW KIND OF HORROR [CD]

英国バーミンガム出身の2人組による、約2年ぶり10作目。


新種のホラーとは言うものの、実際の内容はぶっちゃけ今までとほぼ同じですね。人力とは思えない超高速ブラストビート、殺傷力高いヘヴィネスに粘着質のダークネスが絡んだギターリフ、そして臓物をブチ撒ける勢いのデスヴォイスからオペラ風歌唱までを駆使するヴォーカル。要所要所で顔を出すインダストリアル・サウンドが圧の強さに拍車を掛ける、という所までも彼らの通例といった感じ。ただやはり一点突破的な攻撃性の中にリズムやリフの切り返しを盛り込み、その巧みな曲構成によってフィジカルを直接突き動かす、この野性的な勘の鋭さは相変わらず健在。デスメタルやインダストリアルに加え、やはりグラインドコア的とも言えるハードコアっ気の強さがミソなのではないかなと思います。エクストリーム・メタルと一口に言っても要素の配分を少し変えるだけで響きは随分と違ってくる、その微妙な匙加減を彼らは本能で熟知しているのでしょう。今回は10曲33分といつにも増してコンパクトに纏まっているし、「Mother of Satan」でセイタン!セイタン!繰り返す場面などはもはや爽快感と同時に笑いが込み上げてくる。溜まったストレスに効きます。

Rating: 7.0/10



Anaal Nathrakh "Obscene as Cancer" (OFFICIAL VIDEO)