DIMLIM 「MISC.」
DIR EN GREY への憧憬に始まってモダンヘヴィネスを志し、プログレッシブメタルから Djent に至る道筋を経て頭角を現してきた彼らが、メンバー脱退を機としてか更なる変貌を遂げることに成功しました。これまで一番の武器だったヘヴィサウンドを大胆にも放棄し、代わりに導入したのはテレキャスターの細く鋭い響きを活かしたマスロック要素。超絶技巧を駆使したギターフレーズは繊細な美しさが際立ち、ディストーションの音色にも重苦しさではなく淡麗さが感じられる。そこにトラップ以降のしなやかなグルーヴを携えたエレクトロニクス、デジタルエディットもバンド演奏を解体する勢いで盛り込み、艶めかしくも冷ややか、それでいて内なる熱量を確かに感じさせる独創的なサウンドスケープを提示しています。ただこれは全く明後日の方向に変化しているわけではなく、ドラムの硬質な鳴り、曲によってはリフの構成にもメタルコア由来の激しさが質を変えて宿っているように思うし、何より V-ROCK 特有のこってりした耽美派ヴォーカルも十分すぎるほどの主張っぷりで、挑戦的な音像を目指しながら立ち位置は一貫している。この変化は進化と呼ばざるを得ない。
Rating: 8.7/10
V.A. 「PARADE III ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~」
【メーカー特典あり】 PARADEIII ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~ [CD] (メーカー特典 : “ジャケットイラスト トートバッグ" 付)
- アーティスト:BUCK-TICK
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2020/01/29
- メディア: CD
思わず笑ってしまうくらい過剰なカヴァーばかり。発表された参加メンツを最初に見た時には、もちろん意外な名前も並んではいるものの、どちらかと言うとこれまでの制作に携わっていた身内がどうも多いな…という印象で、新鮮味の薄さが少し気にかかっていました。ただそもそも、それら身内的な面々が何故 B-T と繋がっていたかと考えると、表面的な音楽性は異なるとしても、創作に向かう根本の部分で深いシンパシーを感じていたからだろうと、実際に聴くことで瑣末な問題はすぐさま霧消しました。今回提出されたカヴァーはいずれもが各々の方法論によって一切の遠慮なしに改変されており、やりすぎくらいがちょうど良いという B-T ならではの価値観を自然と全員で共有しているかのようで、B-T に敬意を払うのであれば音楽性をなぞるのではなくその姿勢こそをなぞるべき、というある種の誠意が透けて見えます。極悪のアグレッションを貫いた DIR EN GREY や GARI 、まさかの歌詞まで改変した椎名林檎も強烈なインパクトですが、個人的に一番食らったのは藤巻亮太。こんな清々しい寂寥に満ちた「JUST ONE MORE KISS」を一体誰が予想できた?
Rating: 7.7/10
BUCK-TICK トリビュートアルバム 『PARADE III ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』 トレーラー映像