CHAI 「PUNK」

PUNK

PUNK

名古屋出身の4人組による、1年4ヶ月ぶり2作目。


すでに国内のみならず海外でも支持層を拡大しつつある彼女ら。「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」というこのバンドの根幹を成すコンセプトは、世に蔓延るセクシズムやルッキズムといった差別意識に抵抗し、多様性を重んじるという昨今の潮流と完全に合致したもので、その先進的な姿勢が国境を超えて評価されているということですね。それで自分は今作で初めて実際の音をちゃんと聴いたのですが、予想以上にヘンテコな作りで驚いた。普通だとヴォーカルを置くであろう位置にベースとドラムが鎮座してボトムの太さをアピールし、賑々しいヴォーカルやギター、シンセがその周りを取り囲むように配置されているという、場面によってはカオティックな印象すらある音像。インタビューで彼女らは Superorganism や The Go! Team の名前を挙げていましたが、なるほどプロダクションにおけるフリーキーで痛快な広がりは通じるものが感じられるし、小奇麗に整頓するよりもこの方が歌詞中のメッセージを体現してると言えるかも。ポリティカルと言うほど肩肘張ったものではなく、ただ自分らしさに希望を持ち、自由になるためのきっかけがこの音。

Rating: 7.9/10



CHAI『CHOOSE GO!』Official Music Video

Panda Bear 「Buoys」

Buoys

Buoys

米国ボルチモア出身のシンガーソングライターによる、約4年ぶり6作目。


ここ最近の彼のソロや Animal Collective 本隊の作品と比較しても、今作は随分と様相が違って見えます。これまでの彼のトレードマークでもあった、空間を埋め尽くすシンセサウンドの重層によるサイケデリアから大きく脱却し、今回はむしろ音の隙間を活かしたシンプルな音作りが特徴。全編においてアコースティックギターの音色が用いられているという点では「Sung Tongs」辺りのフリークフォーク期への回帰とも受け取れそうですが、両者を聴き比べてみるとやはり微妙に質感は異なる。柔らかなギターストロークと奇矯でファニーなシンセ音が水と油のように反発しながら、同じ空間の中で同列に共存しているその音像からは、かつてのドリーミーな暖かみや聖性ではなく、徐々に水の底に沈んでいくような冷たさ、仄暗さを感じます。Noah Lennox の歌声も今まで以上にクリアな輪郭を持ち、ギター/シンセ/ヴォーカルがそれぞれ独立したテクスチャーとして立体的に組み込まれ、シュールでいてそこはかとない侘しさを醸し出す。それはフリークフォークから様々な実験開発を経た後に辿り着いた、また別の名前のフォーク変異種と言えるものでしょう。

Rating: 7.4/10



Panda Bear - Token (Official Video)