Ambrose Akinmusire 「on the tender spot of every calloused moment」

On the Tender Spot of..

On the Tender Spot of..

米国オークランド出身のトランペット奏者による、1年8ヶ月ぶり5作目。


アルバム表題をそのまま愚直に訳せば "硬さの中に柔らかさを見出す" ということでしょうが、これは彼のみならず、ジャズのみならず、音楽という表現手法それ自体が掲げるテーゼ、本質そのものだと言えるでしょう。明るい和音の響きに一抹の切なさを見出し、鼓膜に悪影響を及ぼしそうな重低音に安堵感を見出し、ドラムマシンの規則正しいグルーヴに野生の躍動を見出し、果ては無音の中に音を見出す。二律背反や矛盾を串刺しにする大胆さと、角度によっていくらでも表情を変える微妙さ。それらこそが音楽の持つプリミティブな魅力であるはずで、この作品はそういった本質なるものを果敢に追い求める、極めて挑戦的、ミュージシャンとして正義的な内容であると思います。作曲とも即興とも判別のつかない、極めて自由度の高いセッションが全編に渡って展開されており、「Tide of Hyacinth」では収斂と開放を連結するダイナミックさに圧倒され、フュージョン風の「Yessss」では優美さと緊張感の綯交ぜになった空気感が染み入り、「Hooded procession (read the names outloud)」では穏やかなキーボードの音色に怒りや悲しみの投影を見る。果てのない深み。

Rating: 8.1/10



Ambrose Akinmusire - Tide of Hyacinth

Protest the Hero 「Palimpsest」

Palimpsest

Palimpsest

カナダ出身の4人組による、6年8ヶ月ぶり5作目。


めちゃめちゃ元気だなおい!前作「Volition」リリース前後にリズム隊の2人が脱退したり、ヴォーカル Rody Walker はツアー中止を余儀なくされるほど喉に不調をきたしたりと、ハプニングの連続で活動にやや暗雲が漂っているように見えていましたが、長いスパンを経ての今作はそんな翳りなど微塵も見せず、彼らが今もなお血を滾らせまくっていることを雄弁に示しています。高速で畳み掛けるテクニカルプレイは相変わらずの熟達っぷり、けれどプログレッシブと形容されるような実験性や敷居の高さはなく、むしろ全体から受ける印象は極めて単純明快、何ならパワーメタル的とも言えるくらいストレートなもの。さらに今回はいつになく絢爛なストリングスアレンジも盛り盛りでインパクトの強さに拍車を掛けており、ある意味ヘヴィメタルの王道中の王道を突き進まんとする豪胆さが際立っています。それに今作はどの曲を取って見ても、現メンバー全員が一丸となって Protest the Hero というバンドを全うしようとするある種の誠実さが満ち溢れていて、ほとんど得意技しかやっていない代わりに詰め込まれた熱量は半端ではない。いま我々に必要なのはこの熱さだ。

Rating: 7.7/10



Protest The Hero | From The Sky (Official Video)