Isobel Campbell 「There is No Other...」

There Is No Other...

There Is No Other...

  • アーティスト:Isobel Campbell
  • 出版社/メーカー: Cooking Vinyl
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: CD
スコットランド出身のシンガーソングライターによる、13年3ヶ月ぶり5作目。


方向性としては彼女がかつて在籍していた Belle and Sebastian に近しい部分もあったり、微妙な差異もあったり。基本軸にあるのはノーブルな落ち着きを見せる弾き語りフォークポップ。肩の力の抜けたウィスパーヴォイスは麗らかな春の日差しを思わせつつ、何処となく蠱惑的な妖しさも見え隠れ。しかしながらモノトーンには陥ることなく、アレンジ面においては楽曲毎に多彩な趣向が凝らされています。至極簡素な打ち込みリズムを用いて Stereolab 風のクラウトロック・ポップに改変した Tom Petty「Runnin' Down a Dream」カヴァー、ゴスペルコーラスを導入して楽曲の持つ暖かみをさらにふくよかな感触に仕立てた「The Heart of It All」「Hey World」、室内楽的ストリングスの優美さがノスタルジックな哀愁を深める「Counting Fireflies」「Below Zero」、また妖しいサイケムードがそこはかとなく滲み出た「The National Bird of India」のような変わり種もあったりと、何気ない素振りの中にフットワークの軽い遊び心がたくさん。総じて長期のインターバルが嘘だったかのような気負いのなさで、力みを見せないことにとことん注力するという逆説みたいな。

Rating: 7.3/10



Isobel Campbell - Ant Life (Official Video)

Wire 「Mind Hive」

Mind Hive

Mind Hive

  • アーティスト:Wire
  • 出版社/メーカー: Pink Flag
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: CD
英国ロンドン出身の4人組による、2年10ヶ月ぶり17作目。


オープナー「Be Like Them」からして強烈。オリエンタルな艶めかしさと鉄槌のようなディストーション、また不穏なフィードバックノイズも効果的に挿入され、そこから黒煙のごとく立ち昇る禍々しさに少しずつ身体を飲み込まれていくような感覚に陥る。いつになくソリッドに引き締まった音像はパンク通り越してメタリックな印象すらありますが、無闇に音圧を上げてトゥーマッチな迫力を打ち出すことはせず、必要なものを必要なぶんだけ採用するシビアな審美眼、風通し良く整理されたサウンドデザインによって理知的なイメージも保たれており、これぞワイヤーと言えるストレンジな個性が更なる洗練度に到達しています。どの曲もまあ刺激的だけど、特に「Shadows」~「Oklahoma」の壮絶な流れには参ってしまった。幻惑的な美しさも冷ややかな緊張感も、衰えるどころか新たなピーク値。核の部分は70年代のデビュー時から地続きで、なおかつ初期の荒々しさがベテランならではの精緻さ(老獪さ?)へと移り変わり、最新型のフォルムであることをきっちりアピールし得るという、きっとあまねく全てのミュージシャンにとっての理想と呼べる形でしょう。

Rating: 8.2/10



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