坂本真綾 「今日だけの音楽」

今日だけの音楽(Blu-ray付初回限定盤)

今日だけの音楽(Blu-ray付初回限定盤)

  • アーティスト:坂本真綾
  • 出版社/メーカー: フライングドッグ
  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: CD
約4年ぶりとなるオリジナルフルレンス10作目。


多彩な作家陣が参加してのヴァラエティに富んだ楽曲群ではありますが、シングル既発曲を多く含んでいた前作「FOLLOW ME UP」に比べると、アルバム全体の筋道が綺麗に整理された、オリジナル作としてのトータリティを感じさせる内容になっています。その中で特に重要な役割を担っているように見えるのが、昨今のオルタナティブ R&B の潮流を意識した大沢伸一作「ホーキングの空に」、伊澤一葉による流麗な美しさのジャズナンバー「お望み通り」、そしてクセ控え目ながらいかにも川谷絵音らしい「ユーランゴブレット」「細やかに蓋をして」あたり。方向性はまちまちですが、真綾さんにとってはいずれも目新しい試みであり、しとやかな憂いを纏ったムードが彼女の歌声と驚くほどにマッチしている、という点では共通しているかと思います。微かな震えの中に情感を宿した涼やかな歌声、それは以前のあどけなさや凛々しさではなく、風通しの良い余裕や落ち着いた気品を匂わせる。そんな現在の真綾さんのスタイルを引き立たせるには十分効果的な楽曲群。これまでの作品がそうであったように、確実に「今」を反映した内容ですね。さすがのアルバム表題。

Rating: 7.5/10



坂本真綾 - 『今日だけの音楽』ショートムービー(ダイジェスト)

Beck 「Hyperspace」

ハイパースペース

ハイパースペース

  • アーティスト:ベック
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: CD
約2年ぶりとなる14作目。


やたらとヴェイパーウェーブ臭の強いジャケットに思わず身構えてしまいますが、楽曲自体はもっと真っ当なエレクトロポップ。それも前作「Colors」のダンサブルな作風からまた一転し、アンビエント的な浮遊感、アンニュイな翳りを多く含んだ夢見心地のムードが充満しています。大半の楽曲で共作者/プロデューサーとして名を連ねているのが Pharrell Williams 。彼の助力がどれほど大きいかはすぐに掴み取れる。「Uneventful Days」や「Chemical」あたりは最も分かりやすくトラップ以降の R&B ポップに沿ったものだし、その他でも深い霞が棚引くようなサウンドデザインはヒップホップや R&B 勢の最新鋭の潮流を意識したが故のものかと。その中で Beck 本人のブルージーな渋味のある声は良い意味でやや異質な感触があり、カメレオンのごとくスタイルを変容させながらも記名性はきっちり確保されていると思います。聴きようによってはかつての「Sea Change」の頃に顕著だった憂いの要素が別のフィルターを通して再構築されたという風にも見えるし、最新型のフォルムを持ちつつも、彼のキャリアの中で決して突飛なものではないはず。

Rating: 7.3/10



Beck - Uneventful Days