読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる








水曜日のカンパネラ「SUPERMAN」

S

SUPERMAN (CD版)

SUPERMAN (CD版)

1年3ヶ月ぶりとなる6作目。


昨年の「UMA」でのビート/サウンド志向から再びポップ要素増加への揺り戻し。EDM 、トラップ、フューチャーハウスといった現行クラブミュージックを消化したトラックで引っ張りつつ、脱力ヴォーカルと脱力歌詞で聴き手を煙に巻くといういつもの水カン節、それが今作ではメロディの切なさや煌びやかな装飾も数割増しで、異物的なインパクトよりもポップスとしての受け皿の広さを意識した、ある意味ようやくメジャーらしくなったと言える内容です。とは言っても決して薄味になったわけではなく、ビートのフリーキーな配置やアタック感は今まで通りのキレを保っており、そのため「アラジン」「坂本龍馬」のような柔らかな広がりのある曲にもスリリングな緊張感が加味されてる。門戸の広さと密度を両立しているわけですが、そこでコムアイのコミカルなヘタウマ歌唱はやはり好みの分かれ目となるわけで、個人的にはここまで歌モノに寄るならヴォーカルの魅力も真っ当に進化していてほしいなという気持ちが残る。その辺のズレが水カンの味の決め手ではあるのですが、逆に曲の良さを伝わりづらくする足枷になってる気がしなくもないなと。

Rating: 7.1/10



水曜日のカンパネラ『一休さん』

Syd「Fin」

RCMD S

Fin

Fin

カリフォルニア出身のシンガーによる初フルレンス。


彼女がフロントを務める The Internet でのエレクトロニックな冷たい感触、また都会の夜を想起させる洗練されたソウル/ R&B 要素はそのままこのソロ作にも引き継がれていますが、ほぼ全編がトラップビートで統一されてバンド感はすっかり払拭。狙いを明確に定め、今現在のポップシーンへの意識をより一層高めた内容になっています。一貫して抑揚は低く保たれたまま、静けさを湛えたムードの中で仄かに淫靡さも醸し出す、その陰影の深さはトリップホップの内省や緊張感と繋がるようでもあるし、もっとラグジュアリーな甘い恍惚を醸し出すもの。収められた楽曲の多くは恋心や一夜の情事、苦い離別、あるいはヒップホップマナーに沿った自己賛美などもありますが、ともかく限られた今この瞬間、刹那を切り取った内容のものが多い。その刹那的な感傷、情熱は Syd の物憂げでクールなヴォーカルにより、実にニュアンス豊かで説得力のある表現となっています。元々オーバーグラウンドのポップスとは往々にしてそういった刹那を歌うものかと思いますが、彼女の歌はその真っ当な王道を踏襲しても容易くは消費されない、それだけの強度があるということ。

Rating: 8.4/10



Syd - All About Me