Rose Elinor Dougall「Stellular」
- アーティスト: Rose Elinor Dougall
- 出版社/メーカー: Vermilion Records/BBQ
- 発売日: 2017/02/12
- メディア: CD
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前作に当たる「Without Why」が60年代オールディーズを基調としたシックで洒脱な作風だったのに対し、今作は80年代以降のインディロックの要素が強く出たような印象。ネオサイケ風味のギターサウンドに華やかなシンセを添えたアレンジ、その色鮮やかさや快活さによって前作のアンニュイな空気を少しばかり入れ替えています。その点では The Pipettes 時代のポップ感が舞い戻ってきたとも受け取れますが、彼女のヴォーカル自体はその10年前よりも落ち着きや深みをグッと増しており、軽やかなサウンドをクールに引き締める役割を果たしてる。「Strange Warnings」や「Hell and Back」ではクラウトロックの領域まで肉薄した挑戦的なサイケデリアを展開し、その一方で彼女の包容力ある歌心が堪能できる「Take Yourself With You」、ファンキーな躍動感を打ち出したシンセポップ「All at Once」と、ポップスとしての普遍的な良さにクローズアップした楽曲も多数。窓口の広さも奥行きも拡張された豊かな音楽性、その中で彼女の歌声は実に伸びやか、ナチュラルでいて多彩な表情を見せてくれます。聴いてるうちにその気品にすっかり魅了されてしまう。
Rating: 7.9/10
Cloud Nothings「Life Without Sound」
- アーティスト:Cloud Nothings
- 発売日: 2017/01/27
- メディア: CD
寂寥。それは彼らの名を世に広く知らしめた前々作「Attack on Memory」の頃から重要なエッセンスでしたが、このアルバムではその側面が特に強調されているように感じます。ちょうどジャケットにもある冬の茫洋とした水平線を眺めるような、心にぽっかりと穴の開いた遣る瀬なさ。セカンドギタリストが新加入してアンサンブルの厚みが増強されつつ、楽曲自体は緩やかなミドルテンポが多数。それは前作「Here and Nowhere Else」での、過剰なほどのパンキッシュな勢いに衝撃を受けた身には随分と地味なように映る。それでも二度三度と聴いてみれば、彼らのもうひとつの武器である牧歌的でフックに満ちたメロディセンスが、よりいぶし銀のテイストで表現されていることにすぐ気付かされます。肺に水が溜まるような荒涼とした切なさを湛えた「Up to the Surface」に始まり、もはや Weezer の領域に迫るポップさの「Internal World」、ネオアコに通じる軽快さだけど歌詞はやはり沈痛な面持ちをした「Modern Act」、そしてクローザー「Realize My Fate」での、自らの内面を洗い浚い吐き出すようにして迫り来る轟音。この音こそがエモの名に相応しい。
Rating: 8.1/10