ぼくのりりっくのぼうよみ「Noah's Ark」

1998年生まれ、横浜出身のラッパーによる約1年ぶり2作目。


思ってたよりも普通に J-POP でしたね。ラップ箇所もあるにはあるものの、それよりもファンタジックな美しさを基調としたエレクトロトラックに乗せ、棒読みとは正反対のしなやかかつ朗々とした歌を聴かせる、真っ当なポップス。その中で歌われる「ノアの方舟」とは何を差しているのか。ざっくり言えば生きる上での手法、解決策のようなものでした。情報過多の世界で何が正しいのか分からない、すっかり心を擦り減らして生きる意味を見い出せない、けれど結局ぼくはぼくのままでいいんだ!世界は実は可能性に満ちている!という自己啓発プレゼン。もしかすると他のラッパーとは一線を画した独自の世界観を見せてくれるのだろうか、という期待を勝手に抱いていたもので、結局言ってることのせせこましさに落胆は禁じ得なかった。モラトリアムの鬱屈を歌っているようで結論はストンと提示済み、その話が無駄に流暢すぎて何だか説教臭く、ともすればやたらと上段目線のスノビズムすら感じるのだけど自分が穿ちすぎなだけだろうか。例えば SEKAI NO OWARI にも通じる悪い意味での軽さ、不自然さを今作からも感じ取ってしまいました。

Rating: 3.2/10



ぼくのりりっくのぼうよみ - 「Be Noble」ミュージックビデオ

ムック「脈拍」

脈拍(初回生産限定盤A)(DVD付)

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2年7ヶ月となる12作目。


ここ数作のエレクトロ路線からは大幅に脱却し、元来のへヴィロック要素が再び前面に出た今作。「ENDER ENDER」や「睡蓮」といった EDM 寄りの楽曲がライブでもすっかり馴染んだ頃になっての路線回帰は、ともすれば地味でこじんまりした内容に見えてしまうリスクがあるかと思いますが、先行シングル「CLASSIC」や「故に、摩天楼」の明快に J-POP らしいポップさ、哀愁の歌謡ロック「勿忘草」にプロデューサー ken の影響が最も色濃く見られる「シリウス」と、横道に逸れた楽曲も数多く兼備しており、相変わらずの雑多さで飽きさせない構成。言わば「極彩」のアップデート版という感覚が近いでしょうか。表題曲「脈拍」や「絶体絶命」でのダークでシリアスな面も中心にあり、これまでに打ち出してきた音楽性を改めて纏め直した、今年で20周年を迎える彼らに相応しい集大成感。まあ中には「BILLY×2 ~Entwines ROCK STARS~」みたいなダサいご愛嬌な曲をうっかり出してしまう所も変わってないのだけれど(苦笑)、そういうハズした所も含めて、そうそうムックってこんなバンドだよなと。ここが20年の成果であり、この先に向けての基盤となるはず。

Rating: 6.4/10



MUCC 『CLASSIC』MUSIC VIDEO