Kamasi Washington 「Harmony of Difference」

Harmony of Difference [帯・解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (YTCD171JP)

Harmony of Difference [帯・解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (YTCD171JP)

カリフォルニア出身のサックス奏者による初の EP 作品。


今作は前半と後半の二篇に大きく分けられます。前半は「Desire」「Humility」「Knowledge」「Perspective」「Integrity」と名付けられた全5章の組曲。味わい深いコントラバスに始まり、各パートの音色が徐々に立ち昇って有機的に絡み合いながら、章が移り変わるごとに緩急の切り替えをスムーズかつ鮮やかにこなし、実に情感豊か、彩り豊かなパノラマの光景を音の中に浮かび上がらせています。そして後半に当たる13分の大曲「Truth」ではやはり軽やかな場面転換を見せつつ、荘厳なゴスペルコーラスも加わってなお世界観が広がり、もはやスピリチュアルとも言える深淵へと突き進んでいます。いずれにおいても饒舌なテクニックと優美なムード、その内に潜むエモーショナルな熱量といったジャズ本来の魅力を存分に発揮しながら、エレクトロニカ/ポストロック的な意匠を凝らした音響処理は他のジャズには無い圧倒的なスケール感を生み、主張の強いパワフルなうねりを見せるリズム隊はアンサンブルに緊張感を与え、楽曲の持つダイナミズムをさらに底上げしてる。前作「The Epic」で見せた小宇宙を32分に濃縮した、ひとつの感動的な音楽体験です。

Rating: 8.8/10



Kamasi Washington - Truth

eastern youth 「SONGentoJIYU」

SONGentoJIYU

SONGentoJIYU

約2年半ぶりとなる17作目。


音の向こうに朝焼けのような、淡くぼやけた大きな光が見える。前作「ボトムオブザワールド」は楽曲によってアップ/ミドル/スロウの役割がきっちりと分けられた作品でしたが、今作は多少の BPM の揺れはあるものの、基本的には頭からケツまでずっと突っ走り続けています。カリッカリに乾いたディストーションに、時には堰を切って暴発したノイズを絡ませながら、いつものように全身全霊を注ぐ勢いで絶唱するイースタン流のエモ/ハードコア。その中には新加入したベーシスト村岡ゆかによる朗らかな女声コーラスもフィーチャーされ、今までより丸みを帯びた暖かみを感じる場面が多いかもしれません。特に「ちっぽけだって、なんだっていいから、歌を俺にくれ」での不意を突いて挿入される郷愁や、「旅の空」での賑やかさなどは今のイースタンだからこそ生まれ得るものでしょう。そういった新鮮な一面をアピールしつつ、本来の泥臭さはやっぱり変わらないまま。それしか出来ない、それ以外に興味はないと言わんばかりの直線的な楽曲群は、何が何でも光を掴んでやるという気迫、血と汗と涙に塗れた人間味を常に実感させてくれる。ここが第2章の始まり。

Rating: 8.2/10



eastern youth「ソンゲントジユウ」 ミュージックビデオ