cali≠gari 「14」

14 狂信盤

14 狂信盤

約1年半ぶりとなる、再結成後5作目のフルレンス。


最近の作品は「夏」だったり「ダーク」だったりと、全体のテーマというものがうっすら決められていましたが、今作はまっさらのノーコンセプト。その上でメンバー各々がカリガリらしいと言える楽曲を持ち寄るという、従来の「実験室」スタイルに回帰したところがあり、また10曲39分というコンパクトな構成も相まって、再結成以降の中ではカリガリという個性を最も分かりやすく把握できる内容ではないかなと思います。「マシンガンララバイ」「飛燕騒曲」といったジャンクな暴れ曲がある一方で、何処か懐かしさを覚えるエレクトロチューン「拝啓=BGM」やポジティブな開放感に満ちた「いつか花は咲くだろう」のようなポップ曲があり、また実験的アンビエントの「月白」、プログレ要素も突っ込んでヘヴィな空気感を醸し出す「死は眠りを散歩する」など、曲調はいつも通りバラバラ。しかしそれらの楽曲が並ぶと一本の線、カリガリらしさという統一感が不思議と浮かび上がる。変に奇を衒ったり捏ね繰り回してる様子は全く無い、むしろ自然体という印象すら受けるのだけど、その自然体の状態が既に異形という。この味はやはり彼らにしか出せない。

Rating: 8.0/10



cali≠gari「14」試聴動画

早見沙織 「JUNCTION」

早見沙織/JUNCTION (CD+Blu-ray盤/2枚組)

早見沙織/JUNCTION (CD+Blu-ray盤/2枚組)

東京出身の声優シンガーによる、約2年半ぶり2作目。


交差点というアルバム表題はなるほど言い得て妙なもので、サラッと聴くだけでも彼女の素養であろうジャズ、ソウル、ボッサ、ファンクといった音楽要素が代わる代わる展開され、何とも賑やかでカラフル、それでいて中心には確かな一本の線が通った作品に仕上がっています。上記のジャンル群であったり竹内まりやの提供曲もあったりで、基本的には70~80年代ソフトロックの現代的ブラッシュアップ版といった趣ですが、中盤「白い部屋」「祝福」ではウィスパーヴォイスとポストロック風音響アプローチを合わせるという手法で新居昭乃を彷彿とさせるなど、意外な冒険心もあり。またいわゆるアイドル声優的な作り声はなく、衒いのない伸びやかな清涼感を見せる歌声、そこに豊かなハーモニーも存分に盛り込み、ポップスとしてどれだけ高品質を目指せるか、という照準の定め方に全く澱みがない。芳醇な味わいと新鮮味を同時に感じさせる楽曲群、そしてイマジナティブな余白を残した瑞々しい言葉の数々。大半の詞曲が自身のペンによるものというのも驚きだし、ここまで表現者としての個性を強く打ち出してくるとは思いませんでした。広く聴かれてほしい。

Rating: 8.5/10



早見沙織「Let me hear」MUSIC VIDEO