Shabaka & the Ancestors 「We Are Sent Here by History」
- アーティスト:Shabaka And The Ancestors
- 発売日: 2020/03/13
- メディア: CD
Shabaka は Sons of Kemet や The Comet Is Coming といった複数のバンドを併行で稼働していたり、Jonny Greenwood の劇伴にゲスト参加するなど外仕事も数多くこなしたりで、現行のジャズシーンにおいて強く存在感を発揮しているキーパーソンのひとりというわけですね。それでこのバンドは彼が憧憬する南アフリカの熟達プレイヤーを招聘し、作曲/リーダーを自らが務めるというスタイルで、彼個人の持つ音楽的嗜好や哲学が特に色濃く反映されているのかなと思います。ダーティで泥臭いグルーヴがジャズならではの渋味と躍動感を伝えつつ、ディープな奥行きのある音処理によって低熱のムードを醸し出し、それがアルバム全体を貫くスピリチュアルな世界観をより説得力あるものに引き立てています。過去の歴史の積み重ねによって我々の運命は左右され、やがては朽ちていかなければならない。その限られた時間の中で闇を突き抜け、希望ある未来、自由を手に入れるにはどうするべきか。数々のイマジナティブな表題から察するに、彼らはその答えに辿り着くための力強さを、伝統と革新がクロスする自らの演奏に託しているように感じますが、いかがでしょうか。
Rating: 8.6/10
Four Tet 「Sixteen Oceans」
- アーティスト:Four Tet
- 発売日: 2020/03/20
- メディア: CD
めっちゃノリノリ。活動初期の頃はポストロック経由、フォークトロニカの旗手として名を馳せていた彼ですが、2010年作「There Is Love in You」あたりからはダンスプロパーなグルーヴの構築を改めて重視し始め、従来の繊細さを保ちながらハウスやガラージなどフィジカルな即効性の強い方向にシフト。数年前に自分が見た来日公演では、彼はフロアの中央部に機材をセットしてアップリフティングな楽曲を連発し、自ら含めて会場全体を大きく熱狂させていたのをよく覚えています。今回の新譜ではそんな彼の今現在の意向が新たなブラッシュアップを施した形で表出。初っ端「School」「Baby」からストレートに身体を突き上げてきたり、「Teenage Birdsong」「Romantics」ではかなり輪郭の明瞭な、ともすれば J-POP トップチャート勢ばりのメロディラインで春めいた感傷を誘ったり、「Insect Near Piha Beach」に至ってはもはやハードテクノ。えらくビートが太い。かなりヴァラエティに富んだ内容、かつ過去の作風と比較すると随分と大胆な手付きを見せていますが、それでも水彩画のような淡い美しさを全く崩していないのは流石の手腕ですね。
Rating: 7.4/10