LIPHLICH 「フルコースは逆さから」

フルコースは逆さから(Type A)

フルコースは逆さから(Type A)

2010年結成の4人組による、約2年半ぶりフルレンス2作目。


ジャズやブルースといった要素を V-ROCK に組み込み、退廃的な昭和キャバレーテイストに仕上げる大筋は踏襲されていますが、全体的にヘヴィに鍛えられたギターを筆頭にメタル色が台頭してきたのと、クリアに整頓された録音のため一層垢抜けた印象に。 「ヘンピッグ」 なんて何処のジャーマンスラッシュだよと突っ込みたくなる弾きっぷりだったり、ドゥーミーな重さが圧し掛かる 「大計画」 からサバス風リフがザクザク突き刺さる 「マズロウマンション」 と、昨今の流行にも対応した肉体性の強化は次のステップへと進もうとするバンドの野心が強く現れてますね。その一方で 「feminism」 期の黒夢を思わせる 「VESSEL」 や、キッチュなシンセポップに急転直下する 「Fiddle-De-Dee」 、まさかのラテン/サンバ調 「ミズルミナス」 といったとっ散らかり寸前のレンジの広さ。それらが妖艶で洒脱なメロディセンス、ネチっこく絡み付くようなヴォーカルの個性で無理矢理纏められてる、このポテンシャルはちょっと凄いものかも。単なるオサレ/ヘヴィの模倣とは確実に一線を画した、独自の美意識がさらに窓口を拡張した順当な1発。

Rating: 7.7/10