Thee Oh Sees 「Drop」

Drop

Drop

サンフランシスコ出身の5人組による8作目。


70年代ガレージパンクとサイケデリックロックを掛け合わせ、現在の US オルタナティブの文脈に立ち上げたローファイ・インディロックという感じですが、それだけでは収まり切らない毒気の強さをこのバンドは孕んでいます。スッカスカなのにはっちゃけた勢いだけはあり、耳元に蝿が纏わりついてるような素っ頓狂な音が飛び交い、やたらと陽気なのに目は死んでそうな捻じれたムード。ハードロックにも通じる泥臭いリフが痛快な 「Penetrating Eye」 に始まり、表題通りにとことん変態性を追求したら独自の浮遊感が生まれた 「Encrypted Bounce (A Queer Sound)」 、音響で遊びまくったあまりにもドープな音世界の 「Transparent World」 など9曲。この牧歌的でありつつ聴き手をひたすら煙に巻く、シニカルで底意地の悪い態度は近いところだと Deerhunter か、あるいはかつての Ween なんかを彷彿とさせるし、初期のゆらゆら帝国にも通じる妖怪じみたネチっこさがあります。比較的ストレートなパンク感を前面に押し出していた前作と比べても、さらに病状が悪化した感がある。ジャケットでピンときたあなたはおそらく正解です。

Rating: 8.0/10