DOOM「illegal soul」

illegal soul (イリーガル・ソウル)

illegal soul (イリーガル・ソウル)

藤田タカシを中心とする3人組の、92年発表のフルレンス5作目。


そもそも DOOM は基盤をスラッシュメタルに置きながらプログレやゴシック/ニューウェーブの要素も貪欲に取り込み、ごってり濃厚なヘヴィネスを体現しているバンドでしたが、これの前作に当たる「HUMAN NOISE」ではさらに、当時隆盛を見せていたインダストリアル、またフリージャズへのアプローチまでも試み、その世界観の深みはすでに極致を見せていました。今作ではそこから一気にプログレへの回帰が進み、予測のつかない変速/変拍子がこれでもかとばかりに盛り込まれ、彼らのテクニックの高さを存分に堪能できる仕上がりとなっています。もちろんメタル由来の攻撃性も保たれてはいますが、ますます不定形でアヴァンギャルドとなった曲構成の中で、最も印象的なのは縦横無尽に這い回るベースの妖しさ。ねっとりと鼓膜に纏わりつき、聴き手を翻弄するような技巧的ベースプレイがアンサンブル全体の核になっているように感じます。「水葬」や「Those Who Race Toward Death」で見られるインド音楽風の呪術的な装飾も重要なポイント。活動停止前のラスト作なだけに、この作品が現在の DOOM と最もダイレクトに直結しているのかなと。

Rating: 8.7/10