岡村靖幸 「操」

操

  • アーティスト:岡村靖幸
  • 発売日: 2020/04/01
  • メディア: CD
4年3ヶ月ぶりとなる8作目。


30年前は早熟だった岡村ちゃん。30年経った今はそれこそ熟年、と言うかもう "熟" という単語でカヴァー出来るのかというレベルで精力漲りまくりです。なにせオープナー「成功と挫折」からして凄い。これまでよりもさらにブッとい音圧に鍛え上げられたビートは、もはやファンク通り越してインダストリアルのソレ。現代の EBM です。そもそも EBM というジャンルが、無機質なプロダクションとは裏腹のセクシャルで肉感的な脈動を基としているものだから、岡村ちゃんがそこに着地するのも至極当然の流れと言えますね。そこから80年代エレポップフレイヴァーを絶妙に感じさせる「インテリア」の刹那的情熱、間髪入れずのダメ押し「ステップアップLOVE」でフィニッシュ。アルバム表題に掲げる "操" とは言わば社会が作り上げた理想であり、規範であり、同時に自らの本能を縛りつける鎖でもあるわけですよね。そんな心の貞操帯を装着したままで現実とのギャップに翻弄され懊悩する、あまりにも人間的な業の深さ。それを手負いの獣のごとく全身全霊で描く岡村ちゃんのヴォーカルパフォーマンスは相変わらず鬼気迫るものがある。終盤少し失速してる気もするけど。

Rating: 8.2/10



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